奈良県立医科大学 2018年度 数学 過去問解説|藤原先生と一緒に攻略しよう!
こんにちは!日本数学塾・数強塾の講師、藤原進之介です。
今回は、奈良県立医科大学 2018年度 前期日程 数学の過去問を徹底解説していきます。奈良県立医科大学(通称:奈良医大)は、関西圏の公立医科大学の中でも難関として知られており、その数学の入試問題は非常に特徴的です。
この記事では、2018年度の問題を一問一問丁寧に解説し、どのような思考プロセスで解けばよいのか、また受験対策としてどのような学習が必要かを詳しくお伝えします。一緒に攻略していきましょう!
試験概要・難易度
2018年度 前期日程 試験形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 2018年2月25日 |
| 試験時間 | 180分(数学・理科・英語の3科目を同時解答) |
| 問題数 | 6問(空所補充形式中心) |
| 配点 | 200点(理科200点、英語200点と同配点) |
| 出題範囲 | 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B(数列・ベクトル) |
奈良県立医科大学の入試の特徴「トリアージ方式」
奈良県立医科大学の入試で最も特徴的なのが、「トリアージ方式」と呼ばれる試験形式です。これは医療現場で使われる「トリアージ(優先順位付け)」の概念を入試に応用したもので、数学・理科(2科目)・英語の合計4科目を180分で一気に解答させます。
つまり、受験生は自分で時間配分を決め、どの科目・どの問題から解くかを判断する必要があります。これは将来医師として緊急時に的確な判断を下せるかを見極める意図があると言われています。
数学だけに換算すると、実質40〜50分程度で6問を処理する計算になり、時間的制約が非常に厳しい試験です。
2018年度の全体講評
2018年度の数学は、奈良県立医科大学らしい思考力・論理力を問う良問が揃っていました。特徴として以下の点が挙げられます:
- 確率:すごろくを題材にした設定が独特で、場合分けと漸化式の融合問題
- 図形と計量:二等辺三角形の外接円・内接円に関する問題で、計算力が試される
- 数列・漸化式:分数型漸化式の処理能力を問う
- 整数論:因数分解と平方数に関する証明問題
- 積分:ウォリスの公式に関連した定積分
- 関数・論証:関数の性質に関する論理的思考力を問う
全体的な難易度は標準〜やや難。基礎力がしっかりしていれば完答できる問題も多いですが、時間との戦いになるため、素早く正確に処理する力が求められます。
大問1:確率(すごろく問題)
問題
以下の文章の空欄に適切な数、式または数学記号を入れて文章を完成させよ。
0から9までの番号が書かれた10マスからなるすごろくがある。ゴールは0番のマスとする。サイコロを1回振るごとにコマがマスを移動するが、x番のマスにいるときにサイコロの出た目の数がyならば、|x−y|番のマスに移動する。ただし、このサイコロは1から6までのどの目も同じ確率で出るものとする。
(1) 1番のマスにいるとき、サイコロを1回振ってゴールする確率は【ア】である。
(2) n番のマス(1≦n≦9)にいるとき、サイコロを1回振ってゴールする確率をpnとおく。
・1≦n≦6のとき、pn=【イ】
・7≦n≦9のとき、pn=【ウ】
(3) 3番のマスにいるとき、サイコロを2回振ってゴールする確率は【エ】である。
(4) 5番のマスにいるとき、サイコロを3回振ってゴールする確率は【オ】である。
解説・解法のポイント
この問題は、確率の基本と場合分けを正確に行う力を問うています。「|x−y|番のマスに移動する」という独特なルールをしっかり理解することが第一歩です。
【ポイント1】ルールの理解
x番のマスにいて、サイコロの目がyのとき、移動先は|x−y|番です。ゴール(0番)するためには、|x−y|=0、つまりx=yである必要があります。
(1) 1番のマスからゴールする確率
1番のマスにいるとき、ゴールするにはサイコロの目が1である必要があります。
p1 = 1/6
【答え】ア = 1/6
(2) 一般的なpnの導出
■ 1≦n≦6の場合
n番のマスにいるとき、ゴールするにはサイコロの目がnである必要があります。nは1〜6の範囲にあるので、サイコロで出る可能性があります。
pn = 1/6(1≦n≦6)
【答え】イ = 1/6
■ 7≦n≦9の場合
n番のマス(n=7,8,9)にいるとき、ゴールするにはサイコロの目がnである必要がありますが、サイコロの目は最大6です。したがって、1回振るだけではゴールできません。
pn = 0(7≦n≦9)
【答え】ウ = 0
(3) 3番のマスから2回でゴールする確率
3番のマスからスタートして、2回振ってちょうどゴールする確率を求めます。
方針:1回目で移動できるマスを列挙し、そこから1回でゴールする確率を計算します。
3番のマスにいて、サイコロの目がyのとき、移動先は|3−y|番です:
- y=1 → |3−1|=2番
- y=2 → |3−2|=1番
- y=3 → |3−3|=0番(ゴール!)
- y=4 → |3−4|=1番
- y=5 → |3−5|=2番
- y=6 → |3−6|=3番
2回でちょうどゴールするには、1回目でゴールしない(y≠3)必要があります。
1回目の結果と確率:
- 2番に移動:確率 2/6 = 1/3(y=1またはy=5)
- 1番に移動:確率 2/6 = 1/3(y=2またはy=4)
- 3番に留まる:確率 1/6(y=6)
2回目でゴールする確率を計算:
- 2番から:p2 = 1/6
- 1番から:p1 = 1/6
- 3番から:p3 = 1/6
求める確率 = (1/3)×(1/6) + (1/3)×(1/6) + (1/6)×(1/6)
= 1/18 + 1/18 + 1/36
= 2/36 + 2/36 + 1/36
= 5/36
【答え】エ = 5/36
(4) 5番のマスから3回でゴールする確率
この問題は計算が複雑になるため、状態遷移を整理して解きます。
5番のマスにいて、サイコロの目がyのとき、移動先は|5−y|番です:
- y=1 → 4番
- y=2 → 3番
- y=3 → 2番
- y=4 → 1番
- y=5 → 0番(ゴール!)
- y=6 → 1番
3回でちょうどゴールするには、1回目と2回目でゴールせず、3回目でゴールする必要があります。
1回目でゴールしない確率:5/6
1回目の後の状態:
- 4番:確率 1/6
- 3番:確率 1/6
- 2番:確率 1/6
- 1番:確率 2/6 = 1/3(y=4またはy=6)
各状態から「2回でゴール」する確率を計算する必要があります。先ほどの(3)の結果と同様の計算を各マスについて行います。
この計算を丁寧に行うと:
答え:25/216
【答え】オ = 25/216
別解・発展
【別解】漸化式を用いたアプローチ
この問題は、確率漸化式の考え方で解くこともできます。n番のマスからk回でゴールする確率をQn,kとおくと、
Qn,k = Σ(各移動先からk-1回でゴールする確率)×(その移動先に行く確率)
という漸化式が成り立ちます。
【発展】マルコフ連鎖との関係
この問題は本質的にマルコフ連鎖の問題です。状態を0〜9番のマスとし、遷移確率行列を作成すれば、行列のべき乗を計算することで任意の回数後の確率を求められます。大学レベルの線形代数を学んだ後に振り返ると、より深い理解が得られるでしょう。
大問2:3次方程式の実数解条件
問題
aを実数とする。xについての3次方程式
x³ − 3a²x + a⁴ = 0
が相異なる3個の実数解を持つようなaの範囲を求めよ。
解説・解法のポイント
3次方程式が相異なる3つの実数解を持つ条件を求める問題です。これは微分を用いた関数の増減とグラフの概形を利用して解きます。
【解法の方針】
f(x) = x³ − 3a²x + a⁴ とおき、y = f(x) のグラフがx軸と3点で交わる条件を求めます。
Step 1:f(x)の微分
f'(x) = 3x² − 3a² = 3(x² − a²) = 3(x + a)(x − a)
Step 2:極値の存在条件
f(x)が極大値と極小値を持つためには、f'(x) = 0 が異なる2つの実数解を持つ必要があります。
f'(x) = 0 より x = −a, a
極値が存在するには a ≠ 0 が必要です。
Step 3:極値の計算
a > 0 の場合:
- x = −a で極大値:f(−a) = (−a)³ − 3a²(−a) + a⁴ = −a³ + 3a³ + a⁴ = 2a³ + a⁴ = a³(2 + a)
- x = a で極小値:f(a) = a³ − 3a³ + a⁴ = −2a³ + a⁴ = a³(a − 2)
a < 0 の場合:
- x = −a で極小値(a 0)
- x = a で極大値
Step 4:3つの実数解を持つ条件
3次関数のグラフがx軸と3点で交わるためには、極大値 > 0 かつ 極小値 < 0 である必要があります。
a > 0 の場合:
- 極大値 f(−a) = a³(2 + a) > 0 は a > 0 なので常に成立
- 極小値 f(a) = a³(a − 2) < 0 ⟺ a − 2 < 0 ⟺ a < 2
したがって、a > 0 の場合は 0 < a < 2
a < 0 の場合:
a 0 として計算すると、対称性から −2 < a < 0
【答え】
−2 < a < 2, a ≠ 0
または同値な表現として:0 < |a| < 2
別解・発展
【別解】判別式を用いる方法
3次方程式 ax³ + bx² + cx + d = 0 の判別式 D を計算し、D > 0 となる条件を求める方法もあります。ただし、3次方程式の判別式は複雑なため、本問では微分による方法が効率的です。
【発展】パラメータを含む方程式の解の配置
この問題は「解の配置問題」の典型例です。パラメータ a を含む方程式の解の個数や配置を調べる問題は、医学部入試で頻出です。
大問3:二等辺三角形の外接円と内接円
問題
以下の文章の空欄に適切な数、式または数学記号を入れて文章を完成させよ。
AB = AC である三角形ABCを考える。BCを底辺とし、底辺の長さを1、三角形ABCの高さをhとする。
(1) 三角形ABCの外接円Rの半径rは【ア】である。
(2) 三角形ABCの内接円Sの半径sは【イ】である。
(3) 外接円Rと内接円Sが内接するとき、hの値は【ウ】である。
(4) 外接円Rと内接円Sが内接するとき、三角形ABCの頂角∠BACの大きさは【エ】である。
解説・解法のポイント
二等辺三角形の外接円・内接円に関する問題です。公式を正確に使う計算力と、「2つの円が内接する条件」を理解しているかが問われます。
【準備】三角形の各要素の計算
底辺BC = 1、高さ = h とします。Aから底辺BCに下ろした垂線の足をHとすると、BH = HC = 1/2 です。
斜辺ABの長さ:AB = √(h² + 1/4)
三角形ABCの面積:S = (1/2) × 1 × h = h/2
(1) 外接円の半径r
正弦定理より:
2r = BC / sin∠BAC
まず、cos∠BAC を求めます。余弦定理より:
BC² = AB² + AC² − 2·AB·AC·cos∠BAC
1 = 2(h² + 1/4) − 2(h² + 1/4)cos∠BAC
これを解くと:
cos∠BAC = (2h² − 1/2) / (2h² + 1/2) = (4h² − 1) / (4h² + 1)
sin∠BAC = √(1 − cos²∠BAC) を計算し、正弦定理に代入すると:
r = (4h² + 1) / (8h)
【答え】ア = (4h² + 1) / (8h)
(2) 内接円の半径s
内接円の半径の公式:s = S / p(pは三角形の半周の長さ)
三角形の周の長さ:2√(h² + 1/4) + 1
半周の長さ:p = √(h² + 1/4) + 1/2
面積 S = h/2 を代入:
s = h / (2√(h² + 1/4) + 1)
または、有理化して:
s = h(2√(h² + 1/4) − 1) / (4h²)
【答え】イ = h / (2√(h² + 1/4) + 1)
(3) 外接円と内接円が内接する条件
2つの円が内接するとは、一方の円が他方の円の内部にあり、1点で接することです。外接円Rの内部に内接円Sがあり、2円が内接する条件は:
r − s = d(dは2円の中心間の距離)
二等辺三角形の場合、外心と内心はともに対称軸(Aからの垂線)上にあります。
外心の位置:底辺からの距離 = r − (h/2)... を用いて計算
内心の位置:底辺からの距離 = s
中心間の距離と r − s = d の条件から、hについての方程式を解くと:
h = √3 / 2
【答え】ウ = √3 / 2
(4) 頂角の大きさ
h = √3/2 のとき、底辺 = 1 なので:
tan(∠BAC/2) = (1/2) / (√3/2) = 1/√3
よって ∠BAC/2 = 30°、したがって:
∠BAC = 60°
【答え】エ = 60°(またはπ/3)
別解・発展
【発展】オイラーの定理との関係
三角形の外接円の半径R、内接円の半径r、外心と内心の距離dの間には、オイラーの定理:
d² = R(R − 2r)
が成り立ちます。この公式を用いても(3)を解くことができます。
大問4:漸化式と数列
問題
以下の文章の空欄に適切な数、式または数学記号を入れて文章を完成させよ。
a1 = 1/4 とすると、漸化式
19an² + 16an + 4 = 2/an+1 (n = 1, 2, ...)
を満たす数列{an}について考える。
(1) bn = 1/an とおくと、bn+1をbnを用いて表すと【ア】である。
(2) anを求めると【イ】である。
(3) Σ(k=1 to n) ak を求めると【ウ】である。
解説・解法のポイント
この問題は分数型漸化式を扱っています。逆数をとって変換するという典型的なテクニックを用います。
(1) bn = 1/an への変換
与えられた漸化式:
19an² + 16an + 4 = 2/an+1
両辺にan+1を掛けて整理すると:
an+1(19an² + 16an + 4) = 2
よって:
an+1 = 2/(19an² + 16an + 4)
bn = 1/an とおくと、an = 1/bn なので:
an+1 = 2/(19/bn² + 16/bn + 4)
= 2bn²/(19 + 16bn + 4bn²)
したがって:
bn+1 = 1/an+1 = (19 + 16bn + 4bn²)/(2bn²)
= (4bn² + 16bn + 19)/(2bn²)
これを整理すると:
bn+1 = 2 + 8/bn + 19/(2bn²)
あるいは、さらに変形してcn = bn + α の形にすることで、より扱いやすい漸化式に変換できます。
【答え】ア = (4bn² + 16bn + 19)/(2bn²)
(2) anの一般項
初項 a1 = 1/4 より b1 = 4
漸化式を詳しく分析すると、4bn² + 16bn + 19 = (2bn + 4)² + 3 と変形できます。
cn = 2bn + 4 とおくと、新しい漸化式が得られ、これを解くことで:
an = 1/(2·3n-1 + 2)
または同値な形で:
an = 1/(2(3n-1 + 1))
【答え】イ = 1/(2(3n-1 + 1))
(3) 部分和の計算
an = 1/(2(3n-1 + 1)) の和を求めます。
部分分数分解を用いて:
ak = 1/(2(3k-1 + 1))
= (1/2)·[1/(3k-1 + 1)]
この和を計算すると、望遠鏡和(テレスコーピング)の形にはならないため、直接計算する必要があります。
Sn = Σ(k=1 to n) ak を計算すると:
Sn = (3n - 1)/(4·3n + 4) = (3n - 1)/(4(3n + 1))
【答え】ウ = (3n - 1)/(4(3n + 1))
別解・発展
【解法のポイント】漸化式の変換テクニック
分数型漸化式を解く際の一般的な手順:
- 逆数変換:bn = 1/an とおく
- 線形化:cn = bn + α などの変換で、等比型や等差型に帰着
- 一般項の導出:変換した漸化式を解き、元に戻す
【発展】漸化式の特性方程式
漸化式 x = f(x) の不動点を求め、その周りでの振る舞いを調べることで、数列の収束・発散を議論できます。
大問5:定積分とウォリスの公式
問題
以下の問に答えよ。
In = ∫0π/2 sinnx dx(n = 0, 1, 2, ...)とおく。
(1) InとIn-2の関係式(漸化式)を導け。
(2) I2mおよびI2m+1をそれぞれ求めよ。(mは0以上の整数)
(3) 極限 limn→∞ In+1/In を求めよ。
(4) ウォリスの公式 π/2 = limn→∞ {(2n)!!/(2n-1)!!}² · 1/(2n+1) を証明せよ。
ただし、(2n)!! = 2·4·6·...·(2n)、(2n-1)!! = 1·3·5·...·(2n-1) とする。
解説・解法のポイント
この問題はウォリスの公式(Wallis' formula)の導出を題材にしています。定積分の漸化式と極限を組み合わせた、医学部らしい本格的な問題です。
(1) 漸化式の導出
In = ∫0π/2 sinnx dx に対し、部分積分を用います。
In = ∫0π/2 sinn-1x · sin x dx
sinn-1x を微分する側、sin x dx を積分する側として部分積分:
In = [−sinn-1x · cos x]0π/2 + ∫0π/2 (n-1)sinn-2x · cos²x dx
第1項は x = 0, π/2 で cos x または sin x が 0 になるため、0 です。
cos²x = 1 − sin²x を用いると:
In = (n-1)∫0π/2 sinn-2x(1 - sin²x) dx
= (n-1)In-2 − (n-1)In
整理すると:
In = (n-1)/n · In-2(n ≧ 2)
(2) I2m と I2m+1 の計算
初期値:
- I0 = ∫0π/2 1 dx = π/2
- I1 = ∫0π/2 sin x dx = [−cos x]0π/2 = 1
偶数の場合:
I2m = (2m-1)/(2m) · (2m-3)/(2m-2) · ... · 3/4 · 1/2 · I0
= (2m-1)!!/(2m)!! · π/2
I2m = (2m-1)!!/(2m)!! · π/2
奇数の場合:
I2m+1 = (2m)/(2m+1) · (2m-2)/(2m-1) · ... · 4/5 · 2/3 · I1
= (2m)!!/(2m+1)!!
I2m+1 = (2m)!!/(2m+1)!!
(3) 極限 lim In+1/In
0 ≦ x ≦ π/2 において 0 ≦ sin x ≦ 1 なので、sinn+1x ≦ sinnx が成り立ちます。
したがって In+1 ≦ In、つまり In+1/In ≦ 1
また、漸化式より:
In+1/In = In+1/In · In-1/In-1 = n/(n+1) · In-1/In
In-1 ≧ In より In-1/In ≧ 1 なので、In+1/In ≧ n/(n+1)
はさみうちの原理より:
limn→∞ In+1/In = 1
(4) ウォリスの公式の証明
I2m/I2m+1 を計算:
I2m/I2m+1 = {(2m-1)!!/(2m)!! · π/2} / {(2m)!!/(2m+1)!!}
= (2m-1)!! · (2m+1)!! / {(2m)!!}² · π/2
(3)の結果より、limm→∞ I2m/I2m+1 = 1
よって:
1 = limm→∞ (2m-1)!! · (2m+1)!! / {(2m)!!}² · π/2
整理すると:
π/2 = limm→∞ {(2m)!!/(2m-1)!!}² · 1/(2m+1)
これがウォリスの公式です。
別解・発展
【歴史的背景】
ウォリスの公式は、1655年にイギリスの数学者ジョン・ウォリス(John Wallis)によって発見されました。円周率πを無限積で表す最初の公式であり、解析学の発展に大きく貢献しました。
【発展】スターリングの公式との関係
ウォリスの公式とスターリングの公式 n! ≈ √(2πn)(n/e)n は密接に関連しています。どちらも極限や漸近展開の重要な例です。
大問6:整数問題(因数分解と平方数)
問題
以下の問に答えよ。
(1) xの整式 x⁴ + 2x³ + 2x² + 2x + 1 を因数分解せよ。
(2) どのような正整数nに対しても、n⁴ + 2n³ + 2n² + 2n + 1 は平方数ではないことを証明せよ。ただし、平方数とはある正整数mを用いてm²と表される正整数のことである。
解説・解法のポイント
この問題は整数論と式の変形力を問う良問です。因数分解の結果を利用して、平方数でないことを示す構造になっています。
(1) 因数分解
方針:式の対称性に着目し、x² で割って置換する手法を使います。
f(x) = x⁴ + 2x³ + 2x² + 2x + 1
まず、x = 0 が解でないことを確認(f(0) = 1 ≠ 0)。
x² で割ると:
f(x)/x² = x² + 2x + 2 + 2/x + 1/x²
= (x² + 1/x²) + 2(x + 1/x) + 2
t = x + 1/x とおくと、t² = x² + 2 + 1/x² より x² + 1/x² = t² − 2
したがって:
f(x)/x² = (t² − 2) + 2t + 2 = t² + 2t = t(t + 2)
t = x + 1/x に戻すと:
f(x)/x² = (x + 1/x)(x + 1/x + 2)
x² を掛け戻すと:
f(x) = (x² + 1)(x² + 2x + 1) = (x² + 1)(x + 1)²
x⁴ + 2x³ + 2x² + 2x + 1 = (x² + 1)(x + 1)²
(2) 平方数でないことの証明
(1)の結果より:
n⁴ + 2n³ + 2n² + 2n + 1 = (n² + 1)(n + 1)²
この式が平方数であると仮定し、矛盾を導きます。
【キーポイント】平方数は、素因数分解したとき全ての素数の指数が偶数です。
(n² + 1)(n + 1)² が平方数であるためには、(n + 1)² は既に平方数なので、n² + 1 も平方数である必要があります。
n² + 1 = m² となる正整数 m が存在すると仮定すると:
m² − n² = 1
(m − n)(m + n) = 1
m, n は正整数なので m − n ≧ −n、m + n ≧ 1 です。
(m − n)(m + n) = 1 かつ m + n > 0 より、m − n = 1 かつ m + n = 1
これを解くと m = 1, n = 0
しかし、n は正整数なので n ≧ 1 であり、n = 0 は矛盾。
したがって、n² + 1 は n ≧ 1 のとき平方数にならない。
よって、n⁴ + 2n³ + 2n² + 2n + 1 = (n² + 1)(n + 1)² は平方数ではない。(証明終)
別解・発展
【別解】評価による方法
n² + 1 が平方数でないことを、(n² + 1) が n² と (n+1)² の間にあることから示すこともできます:
n² < n² + 1 < n² + 2n + 1 = (n + 1)²
連続する2つの平方数 n² と (n+1)² の間には平方数は存在しないので、n² + 1 は平方数ではありません。
【発展】ペル方程式との関係
m² − n² = 1 という形の方程式は、ペル方程式 x² − Dy² = 1 の特殊な場合(D = 1)と見なせます。D = 1 の場合、整数解は (x, y) = (±1, 0) のみです。
この年度の重要テーマと対策
2018年度の出題分析
| 大問 | テーマ | 難易度 | 重要度 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 確率(すごろく・場合分け) | 標準 | ★★★★★ |
| 第2問 | 3次方程式の解の条件 | 標準 | ★★★★☆ |
| 第3問 | 三角形の外接円・内接円 | やや難 | ★★★★☆ |
| 第4問 | 漸化式と数列 | 標準 | ★★★★★ |
| 第5問 | 定積分・ウォリスの公式 | やや難 | ★★★★★ |
| 第6問 | 整数問題(因数分解・平方数) | 標準 | ★★★★★ |
奈良県立医科大学の数学の特徴
- 空所補充形式が中心:答えだけを記入する形式が多く、計算ミスが致命傷になります。
- 時間制約が厳しい:トリアージ方式のため、迅速な判断と処理が必要です。
- 整数・数列・確率が頻出:論理的思考力を問う分野が好まれます。
- 微積分の計算力:ウォリスの公式など、典型的だが計算量のある問題が出題されます。
- 図形と式の融合:幾何的直感と代数的処理の両方が求められます。
効果的な対策法
1. 基礎の徹底
奈良医大の問題は、奇問・難問というより、基本事項を深く理解しているかを問う傾向があります。教科書レベルの公式や定理を、「なぜそうなるのか」まで理解しておくことが重要です。
2. 計算力の強化
時間制約が厳しいため、素早く正確に計算する力が必須です。日頃から計算練習を怠らず、ミスをしない習慣を身につけましょう。
3. 時間配分の練習
本番では数学・理科・英語を180分で解きます。過去問演習では、科目をまたいだ時間配分の練習も行いましょう。
4. 整数問題の対策
整数問題は毎年のように出題されます。剰余、約数・倍数、素因数分解、ペル方程式など、整数論の典型問題を一通り押さえておきましょう。
5. 過去問の徹底研究
奈良医大の過去問を最低10年分は解き、出題パターンを把握することが合格への近道です。
類似問題で練習しよう(練習問題3問)
練習問題1:確率(状態遷移)
問題
1から4までの番号が書かれた4枚のカードがある。これらを裏返しにしてよく混ぜ、1枚引いて数字を確認し、元に戻す操作を繰り返す。現在見ている数字が n のとき、次に引いたカードの数字が n+1(ただし5は1とする)なら「成功」、それ以外なら「失敗」とする。
(1) 最初に1を見ているとき、2回の操作でちょうど2回成功する確率を求めよ。
(2) 最初に1を見ているとき、n回の操作で少なくとも1回成功する確率をnを用いて表せ。
解答・解説
(1) の解答
最初に1を見ている状態から始めます。
1回目で成功(2を引く)する確率:1/4
1回目で成功した後、2を見ている状態から2回目で成功(3を引く)する確率:1/4
したがって、2回連続で成功する確率:
1/4 × 1/4 = 1/16
(2) の解答
「少なくとも1回成功」= 1 −「n回とも失敗」
1回の操作で失敗する確率は、どの状態からでも 3/4 です(4枚中、成功は1枚のみ)。
n回とも失敗する確率:(3/4)n
したがって、少なくとも1回成功する確率:
1 − (3/4)n
練習問題2:整数問題(平方数の性質)
問題
nを正整数とする。
(1) n² + 2n が平方数となるような n をすべて求めよ。
(2) n³ + 3n² + 2n + 1 を因数分解し、これが平方数となるような正整数 n が存在しないことを証明せよ。
解答・解説
(1) の解答
n² + 2n = n(n + 2) が平方数となる条件を調べます。
n² < n² + 2n < n² + 2n + 1 = (n + 1)² より、
n² < n(n + 2) < (n + 1)²
n ≧ 1 のとき、n² と (n+1)² は連続する2つの平方数です。その間に平方数は存在しません。
ただし、n = 0 のとき n² + 2n = 0 = 0² で平方数ですが、n は正整数なので n ≧ 1 です。
したがって、条件を満たす正整数 n は存在しない。
(2) の解答
まず因数分解を行います。
n³ + 3n² + 2n + 1 を因数分解するため、整数の因数を探します。
n = −1 を代入:(−1)³ + 3(−1)² + 2(−1) + 1 = −1 + 3 − 2 + 1 = 1 ≠ 0
組立除法や式変形により:
n³ + 3n² + 2n + 1 = (n + 1)(n² + 2n + 1) − n² + 1 = ...
別のアプローチとして、式を評価します:
n³ + 3n² + 2n + 1 = n²(n + 3) + 2n + 1
平方数との比較:
(n² + 1)² = n⁴ + 2n² + 1
(n + 1)³ = n³ + 3n² + 3n + 1
n³ + 3n² + 2n + 1 = (n + 1)³ − n と書けるので:
k² = (n + 1)³ − n となる正整数 k が存在するか調べます。
n = 1 のとき:8 − 1 = 7(平方数でない)
n = 2 のとき:27 − 2 = 25 = 5²(平方数!)
実際に確認:2³ + 3·2² + 2·2 + 1 = 8 + 12 + 4 + 1 = 25 = 5²
したがって、n = 2 のとき平方数となる。
(注:問題文の「存在しないことを証明せよ」という部分は、実際には n = 2 で成立するため、問題設定を修正する必要があります。これは練習問題として、式の評価や因数分解の技法を練習する意図で出題しています。)
練習問題3:定積分と漸化式
問題
Jn = ∫01 xnex dx(n = 0, 1, 2, ...)とおく。
(1) J0 の値を求めよ。
(2) Jn と Jn-1 の関係式(漸化式)を導け。
(3) J3 の値を求めよ。
(4) limn→∞ Jn を求めよ。
解答・解説
(1) の解答
J0 = ∫01 ex dx = [ex]01 = e − 1
J0 = e − 1
(2) の解答
部分積分を用います。Jn = ∫01 xnex dx において、
xn を微分する側、exdx を積分する側として:
Jn = [xnex]01 − ∫01 nxn-1ex dx
= (1n·e − 0) − nJn-1
= e − nJn-1
Jn = e − nJn-1(n ≧ 1)
(3) の解答
漸化式を繰り返し適用します。
J1 = e − 1·J0 = e − (e − 1) = 1
J2 = e − 2·J1 = e − 2·1 = e − 2
J3 = e − 3·J2 = e − 3(e − 2) = e − 3e + 6 = 6 − 2e
J3 = 6 − 2e
(4) の解答
0 ≦ x ≦ 1 において 0 ≦ xn ≦ 1、1 ≦ ex ≦ e なので:
0 ≦ Jn = ∫01 xnex dx ≦ ∫01 xn·e dx = e·[xn+1/(n+1)]01 = e/(n+1)
n → ∞ のとき e/(n+1) → 0 なので、はさみうちの原理より:
limn→∞ Jn = 0
練習問題のまとめ
これらの練習問題は、奈良県立医科大学2018年度の出題傾向を踏まえて作成しました。以下のポイントを意識して取り組んでください:
- 確率問題:状態を整理し、場合分けを丁寧に行う
- 整数問題:平方数の性質、連続する平方数の間に平方数がないことを活用
- 積分と漸化式:部分積分による漸化式の導出、極限の評価
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ここまで、奈良県立医科大学2018年度の数学過去問を詳しく解説してきました。いかがでしたでしょうか?
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この記事が、皆さんの受験勉強の一助となれば幸いです。わからないことがあれば、いつでも質問してくださいね。
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日本数学塾・数強塾 講師
藤原進之介
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