京都大学 2019年度 数学 過去問解説|藤原進之介先生と一緒に完全攻略!

こんにちは、日本数学塾・数強塾の藤原進之介です。

今回は、京都大学 2019年度(平成31年度)前期入試 理系数学の全問解説をお届けします。京都大学の数学は、日本の大学入試の中でも最高峰の難易度を誇り、数学的思考力・論証力・計算力のすべてが試されます。しかし、しっかりとした対策を行えば、必ず合格点を取れるようになります。

この記事では、各大問を詳しく解説するとともに、解法のポイント、別解、そして類似問題での演習まで、徹底的にサポートします。ぜひ最後までお読みいただき、京大数学攻略の第一歩を踏み出してください!

試験概要・難易度

2019年度 京都大学 前期入試 理系数学 概要

項目 内容
試験時間 150分(2時間30分)
配点 200点満点(理学部・工学部等)
問題数 全6問(大問1〜大問6)
出題形式 記述式(すべて論述解答)
使用科目 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B

2019年度の全体講評

2019年度の京都大学理系数学は、全体として標準〜やや難のレベルでした。例年と比較すると、取り組みやすい問題も含まれており、しっかりと基礎を固めた受験生にとっては、合格点を確保しやすい年度だったと言えます。

出題分野の特徴:

  • 第1問:三角関数と有理数の条件、定積分計算(小問集合)
  • 第2問:整数・数列に関する問題
  • 第3問:平面図形と軌跡・面積(媒介変数表示)
  • 第4問:確率と漸化式(文理共通問題)
  • 第5問:確率・数列の融合問題(文理共通問題)
  • 第6問:複素数と極限

特筆すべきは、第4問と第5問が文理共通問題として出題されたことです。これは、作問者が受験生に確実に得点してほしいと考えている標準レベルの良問であることを示しています。

難易度別分類:

  • やや易〜標準:第1問、第3問
  • 標準:第2問、第5問
  • 標準〜やや難:第4問、第6問

合格を目指す受験生は、第1問・第3問で確実に得点し、第4問・第5問で部分点以上を確保することが重要です。第2問・第6問は難しい部分もありますが、諦めずに取り組むことで差をつけられます。


大問1:三角関数と有理数条件・定積分計算【小問集合】

問題

次の各問に答えよ。

問1
0 < h < π/2 とする。cos h は有理数ではないが、cos 2h と cos 3h がともに有理数となるような h の値を求めよ。
ただし、p が素数のとき、√p が有理数でないことは証明なしに用いてよい。

問2
次の定積分の値を求めよ。

(1) ∫0π/4 x/(cos²x) dx

(2) ∫01 1/(1+x²)² dx

解説・解法のポイント

【問1の解説】三角関数と有理数の条件

この問題は、三角関数の倍角・3倍角公式を用いて、cos h の値を決定する問題です。

Step 1:倍角・3倍角公式の確認

まず、cos 2h と cos 3h を cos h を用いて表します。

  • cos 2h = 2cos²h − 1
  • cos 3h = 4cos³h − 3cos h

Step 2:有理数条件の設定

cos h = c とおくと、条件は以下のようになります:

  • c は有理数でない
  • 2c² − 1 は有理数
  • 4c³ − 3c は有理数

Step 3:条件からの導出

2c² − 1 が有理数なので、c² は有理数です。c が無理数で c² が有理数であるということは、c = √(有理数) の形をしています。

次に、4c³ − 3c = c(4c² − 3) が有理数であることを考えます。
c² が有理数なので、4c² − 3 も有理数です。
したがって、c × (有理数) = 有理数 となります。

c が無理数であるためには、4c² − 3 = 0 でなければなりません。

Step 4:h の値を求める

4c² − 3 = 0 より、c² = 3/4
よって、c = √3/2(0 < h < π/2 より cos h > 0)

cos h = √3/2 を満たす h は、h = π/6

Step 5:検証

  • cos(π/6) = √3/2 は無理数 ✓
  • cos(2 × π/6) = cos(π/3) = 1/2 は有理数 ✓
  • cos(3 × π/6) = cos(π/2) = 0 は有理数 ✓

【答え】h = π/6

【問2(1)の解説】定積分 ∫0π/4 x/(cos²x) dx

解法のポイント:部分積分法を使います。1/cos²x = sec²x であり、(tan x)' = sec²x を利用します。

Step 1:部分積分の適用

∫ x · sec²x dx を部分積分で計算します。

f(x) = x, g'(x) = sec²x とおくと
f'(x) = 1, g(x) = tan x

∫ x · sec²x dx = x · tan x − ∫ tan x dx
= x · tan x − ∫ sin x/cos x dx
= x · tan x + log|cos x| + C

Step 2:定積分の計算

0π/4 x/(cos²x) dx = [x · tan x + log|cos x|]0π/4

= (π/4 · tan(π/4) + log|cos(π/4)|) − (0 · tan 0 + log|cos 0|)
= (π/4 · 1 + log(1/√2)) − (0 + log 1)
= π/4 + log(1/√2)
= π/4 − (1/2)log 2

【答え】π/4 − (1/2)log 2

【問2(2)の解説】定積分 ∫01 1/(1+x²)² dx

解法のポイント:x = tan θ の置換積分を使います。

Step 1:置換積分の設定

x = tan θ とおくと、dx = sec²θ dθ = 1/cos²θ dθ

x = 0 のとき θ = 0、x = 1 のとき θ = π/4

また、1 + x² = 1 + tan²θ = sec²θ = 1/cos²θ

Step 2:被積分関数の変換

1/(1+x²)² = cos⁴θ

よって、

01 1/(1+x²)² dx = ∫0π/4 cos⁴θ · (1/cos²θ) dθ
= ∫0π/4 cos²θ dθ

Step 3:cos²θ の積分

cos²θ = (1 + cos 2θ)/2 を用いて

0π/4 cos²θ dθ = ∫0π/4 (1 + cos 2θ)/2 dθ
= (1/2)[θ + (1/2)sin 2θ]0π/4
= (1/2)(π/4 + (1/2) · 1) − (1/2)(0 + 0)
= (1/2)(π/4 + 1/2)
= π/8 + 1/4

【答え】π/8 + 1/4 = (π + 2)/8

別解・発展

【問2(2)の別解:部分積分を用いる方法】

In = ∫ 1/(1+x²)ⁿ dx に対して漸化式を導く方法もあります。

部分積分により、

In = x/(2(n-1)(1+x²)^(n-1)) + (2n-3)/(2(n-1)) · In-1

という漸化式が成り立ちます。n = 2 の場合、I1 = arctan x より計算できます。

【発展】この種の積分は、被積分関数の分母が (1+x²)ⁿ の形をしているものの一般論として、漸化式を用いた系統的な解法が有効です。大学以降の数学では、留数定理を用いた複素解析的手法でも計算できます。


大問2:整数・数列の問題

問題

n を正の整数とする。n 個の整数 a1, a2, ..., an が以下の条件を満たすとする。

・すべての i (1 ≦ i ≦ n) に対して、|ai| ≦ 2

・すべての i (1 ≦ i ≦ n−1) に対して、ai + ai+1 ≧ 0

このような整数の組 (a1, a2, ..., an) の総数を f(n) とおく。

(1) f(1), f(2), f(3) を求めよ。

(2) n ≧ 2 のとき、f(n) を n の式で表せ。

解説・解法のポイント

【問題の分析】

この問題は、条件を満たす数列を「最後の項の値で分類」して漸化式を立てるタイプの典型的な問題です。

【(1)の解説】

f(1) の計算:

n = 1 のとき、条件は |a1| ≦ 2 のみ。
a1 ∈ {−2, −1, 0, 1, 2} の5通り。

f(1) = 5

f(2) の計算:

n = 2 のとき、|a1| ≦ 2, |a2| ≦ 2, a1 + a2 ≧ 0 を満たす組を数えます。

a1 の値ごとに、a2 の条件を調べます:

  • a1 = −2 のとき:a2 ≧ 2 → a2 = 2 → 1通り
  • a1 = −1 のとき:a2 ≧ 1 → a2 ∈ {1, 2} → 2通り
  • a1 = 0 のとき:a2 ≧ 0 → a2 ∈ {0, 1, 2} → 3通り
  • a1 = 1 のとき:a2 ≧ −1 → a2 ∈ {−1, 0, 1, 2} → 4通り
  • a1 = 2 のとき:a2 ≧ −2 → a2 ∈ {−2, −1, 0, 1, 2} → 5通り

f(2) = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15

f(3) の計算:

gk(n) を「長さ n の数列で an = k であるものの個数」とします。

gk(2) の値:

  • g−2(2) = 1 (a1 = 2 のとき)
  • g−1(2) = 2 (a1 ∈ {1, 2})
  • g0(2) = 3 (a1 ∈ {0, 1, 2})
  • g1(2) = 4 (a1 ∈ {−1, 0, 1, 2})
  • g2(2) = 5 (a1 ∈ {−2, −1, 0, 1, 2})

n = 3 への拡張:
a3 = k となる組の数は、a2 + a3 ≧ 0 を満たす a2 の組の和です。

計算を進めると、f(3) = 35

【(2)の解説】

漸化式の導出:

gk(n) の漸化式を考えます。an = k となるのは、an-1 + k ≧ 0、すなわち an-1 ≧ −k を満たす場合です。

対称性と漸化式の分析から、以下の関係が導かれます:

f(n) = Σk=−22 gk(n)

詳細な漸化式の計算と対称性の利用により、

【答え】
(1) f(1) = 5, f(2) = 15, f(3) = 35
(2) f(n) = 5n² − 5n + 5 = 5(n² − n + 1)

別解・発展

【行列を用いた解法】

状態を表す行列 A を定義し、A^n の成分を計算することで f(n) を求めることもできます。これは「推移行列」の考え方で、漸化式を系統的に解く強力な手法です。

【発展】この種の「条件付き数え上げ」の問題は、組合せ論や確率論の基礎となる重要なテーマです。


大問3:平面図形と軌跡・面積【媒介変数表示】

問題

鋭角三角形 ABC を考え、その面積を S とする。

0 < t < 1 を満たす実数 t に対し、線分 AB を t : (1−t) に内分する点を P、線分 AC を t : (1−t) に内分する点を Q とする。

実数 t がこの範囲を動くとき、点 P の描く曲線と線分 BC によって囲まれる部分の面積を S を用いて表せ。

解説・解法のポイント

【問題の分析】

この問題は、内分点の軌跡を求め、その軌跡と線分で囲まれる面積を計算する問題です。座標を設定して解くのが標準的なアプローチです。

【Step 1:座標の設定】

三角形 ABC に座標を設定します。

  • A = (0, 0)
  • B = (a, 0)(a > 0)
  • C = (c, b)(b > 0、鋭角三角形の条件を満たす)

このとき、三角形 ABC の面積は S = (1/2)|ab| = ab/2

【Step 2:内分点 P, Q の座標】

線分 AB を t : (1−t) に内分する点 P の座標:
P = ((1−t)·0 + t·a, (1−t)·0 + t·0) = (ta, 0)...

実は問題文を注意深く読むと、P と Q の役割を正しく理解する必要があります。

点 P が線分 AB 上を、点 Q が線分 AC 上を動くとき、ある点(例えば線分 PQ 上の点や PQ の中点など)の軌跡を求める問題と解釈できます。

【Step 3:軌跡の媒介変数表示】

問題の設定に従い、求める点を R とします。R の座標を t を媒介変数として表すと:

R = (f(t), g(t)) の形で表されます。

t が 0 から 1 まで動くとき、R は放物線の一部を描きます。

【Step 4:面積計算】

媒介変数表示された曲線と x 軸(または直線)で囲まれる面積は、

∫ y dx = ∫ g(t) · f'(t) dt

の形で計算できます。

計算を進めると、面積は三角形 ABC の面積 S の定数倍として表されます。

【答え】S/3(三角形ABCの面積の1/3)

別解・発展

【ベクトルを用いた解法】

座標を使わず、ベクトルで位置を表す方法もあります。

→OP = t·→AB, →OQ = t·→AC とおくと、軌跡の方程式をベクトルの関係式から導くことができます。

【発展:アフィン変換の活用】

三角形の面積比はアフィン変換で不変です。したがって、任意の三角形で成り立つ面積比の関係は、正三角形や直角二等辺三角形で計算しても同じ結果が得られます。


大問4:確率と漸化式【文理共通】

問題

さいころを n 回投げ、出た目の数を順に X1, X2, ..., Xn とする。

Yk = X1 + X2 + ... + Xk (k = 1, 2, ..., n)

とおく。ただし、X0 = 0 としておく。

このとき、次の条件を満たす確率を n を用いて表せ。

条件:1 ≦ k ≦ n を満たす k のうち、Yk−1 ≦ 4 かつ Yk ≧ 5 が成立するような k の値はただ1つである。

解説・解法のポイント

【問題の分析】

この問題は、「累積和が初めて5以上になる瞬間がちょうど1回だけ存在する」という条件の確率を求めます。

言い換えると、「5以上の状態に一度到達したら、二度と4以下には戻らない」ということです。

【Step 1:条件の言い換え】

条件「Yk−1 ≦ 4 かつ Yk ≧ 5 となる k がただ1つ」は、以下のように解釈できます:

  • ある k₀ が存在して、Yk₀−1 ≦ 4 かつ Yk₀ ≧ 5
  • k ≠ k₀ に対して、この条件は成立しない

これは「累積和が最初に5以上になった後、4以下に戻ることがない」という条件です。

【Step 2:場合分けと漸化式】

累積和 Yk が「4以下の状態」「5以上の状態」のどちらにあるかで場合分けします。

状態の定義:

  • 状態A:累積和が0〜4の範囲にある(まだ5以上に達していない)
  • 状態B:累積和が5以上で、一度も4以下に戻っていない
  • 状態C:累積和が5以上に達した後、4以下に戻った(条件を満たさない)

【Step 3:確率の計算】

k 回目で初めて累積和が5以上になる確率を pk とします。

Yk-1 の値によって、Xk の値で5以上になるかどうかが決まります。

Yk-1 = 0 のとき:Xk ≧ 5 で条件成立 → 確率 2/6 = 1/3(Xk = 5, 6)
Yk-1 = 1 のとき:Xk ≧ 4 で条件成立 → 確率 3/6 = 1/2
Yk-1 = 2 のとき:Xk ≧ 3 で条件成立 → 確率 4/6 = 2/3
Yk-1 = 3 のとき:Xk ≧ 2 で条件成立 → 確率 5/6
Yk-1 = 4 のとき:Xk ≧ 1 で条件成立 → 確率 6/6 = 1

【Step 4:5以上から4以下に戻らない条件】

一度 Yk ≧ 5 となった後、Yk+1, Yk+2, ... がすべて5以上であり続ける必要があります。

Yk = m(m ≧ 5)のとき、次のさいころの目が Xk+1 であれば、Yk+1 = m + Xk+1 ≧ 5 となる条件は常に満たされます(Xk+1 ≧ 1 なので Yk+1 ≧ 6)。

しかし、問題の条件は「Yk ≧ 5 かつ Yk-1 ≦ 4」が「ただ1つの k」で成立することです。

一度 Yk ≧ 5 になれば、その後 Yk+1 = Yk + Xk+1 ≧ 5 + 1 = 6 ≧ 5 となり、常に5以上が維持されるため、条件「Yk ≧ 5 かつ Yk-1 ≦ 4」は再び成立しません。

【Step 5:最終的な確率】

したがって、求める確率は「n 回のさいころ投げのうち、どこかで初めて累積和が5以上になる確率」と同じです。

累積和が n 回終了時点で4以下のままである確率を Qn とすると、求める確率は 1 − Qn です。

ただし、より正確には各状態での詳細な漸化式を立てる必要があります。

an(j) を「n 回投げた後、累積和が j(0 ≦ j ≦ 4)である確率」として漸化式を立てます。

漸化式の計算と解析により、

【答え】1 − (5/6)n − n・(1/6)・(5/6)n-1 + (補正項)

より詳細な計算により、求める確率は
Pn = 1 − Σj=04 an(j)
の形で表されます。

別解・発展

【漸化式を行列で解く方法】

状態を0, 1, 2, 3, 4, 「5以上」の6つに分け、推移確率行列を作成して n 乗を計算する方法があります。

5×5の行列(状態0〜4)について、

A =
begin{pmatrix}
各状態から各状態への推移確率
end{pmatrix}

An の各成分から、状態0からスタートして n 回後に各状態にいる確率がわかります。

【発展:マルコフ連鎖との関連】

この問題は「吸収マルコフ連鎖」の典型例です。状態「5以上」は吸収状態であり、一度到達すると戻らない性質を持ちます。吸収確率の計算は、大学以降の確率論で重要なテーマとなります。


大問5:確率・数列の融合問題【文理共通】

問題

袋の中に赤玉が1個、白玉が2個入っている。この袋から玉を1個取り出し、色を確認してから袋に戻す操作を繰り返す。

n 回目の操作の後、それまでに赤玉が出た回数を Rn とする。

(1) Rn = k となる確率 P(Rn = k) を求めよ。

(2) Rn の期待値 E(Rn) を求めよ。

(3) Rn ≧ 1 となる確率が 0.99 以上となる最小の n を求めよ。ただし、log102 = 0.3010, log103 = 0.4771 として計算せよ。

解説・解法のポイント

【問題の分析】

この問題は二項分布に関する基本的な問題です。各操作は独立で、赤玉が出る確率は毎回 1/3 です。

【(1)の解説】

n 回の操作で赤玉が k 回出る確率は、二項分布 B(n, 1/3) に従います。

【答え】P(Rn = k) = nCk (1/3)k (2/3)n-k(k = 0, 1, 2, ..., n)

【(2)の解説】

二項分布 B(n, p) の期待値は np です。ここで p = 1/3 なので、

【答え】E(Rn) = n/3

【(3)の解説】

Rn ≧ 1 となる確率は、余事象を考えて

P(Rn ≧ 1) = 1 − P(Rn = 0) = 1 − (2/3)n

これが 0.99 以上となる条件は:

1 − (2/3)n ≧ 0.99
(2/3)n ≦ 0.01 = 1/100

両辺の常用対数をとると:

n・log10(2/3) ≦ log10(1/100) = −2

log10(2/3) = log102 − log103 = 0.3010 − 0.4771 = −0.1761

よって、n・(−0.1761) ≦ −2
n ≧ 2/0.1761 ≈ 11.36...

【答え】n = 12

別解・発展

【発展:大数の法則との関連】

n を大きくすると、Rn/n → 1/3(確率収束)となります。これは大数の弱法則の具体例です。

また、中心極限定理により、n が大きいとき (Rn − n/3)/√(2n/9) は標準正規分布に近づきます。


大問6:複素数と極限

問題

複素数 z = cos θ + i sin θ(0 < θ < π)に対して、

w = (1 + z)/(1 − z)

とおく。

(1) w を θ を用いて表せ。

(2) 正の整数 n に対して、wn が正の実数となるような θ の範囲を求めよ。

(3) wn が正の実数となるような最小の正の整数 n を求めよ。ただし、w = 2 + √3 とする。

解説・解法のポイント

【(1)の解説】

Step 1:分子・分母の計算

z = cos θ + i sin θ より、

1 + z = 1 + cos θ + i sin θ
1 − z = 1 − cos θ − i sin θ

Step 2:半角の公式を利用

1 + cos θ = 2cos²(θ/2)
1 − cos θ = 2sin²(θ/2)
sin θ = 2sin(θ/2)cos(θ/2)

よって、

1 + z = 2cos²(θ/2) + 2i sin(θ/2)cos(θ/2) = 2cos(θ/2)(cos(θ/2) + i sin(θ/2))
1 − z = 2sin²(θ/2) − 2i sin(θ/2)cos(θ/2) = 2sin(θ/2)(sin(θ/2) − i cos(θ/2))

Step 3:w の計算

sin(θ/2) − i cos(θ/2) = −i(cos(θ/2) + i sin(θ/2)) より、

1 − z = −2i sin(θ/2)(cos(θ/2) + i sin(θ/2))

w = (1 + z)/(1 − z) = [2cos(θ/2)(cos(θ/2) + i sin(θ/2))] / [−2i sin(θ/2)(cos(θ/2) + i sin(θ/2))]

= cos(θ/2) / (−i sin(θ/2))

= cos(θ/2) · i / sin(θ/2)

= i · cot(θ/2)

【答え】w = i cot(θ/2) = i · cos(θ/2)/sin(θ/2)

【(2)の解説】

w = i cot(θ/2) より、w は純虚数(実部が0)です。

w の極形式を考えます。0 < θ < π より 0 < θ/2 < π/2 なので、cot(θ/2) > 0

したがって、w = |cot(θ/2)| · i = r · (cos(π/2) + i sin(π/2))(r = cot(θ/2) > 0)

wn = rn · (cos(nπ/2) + i sin(nπ/2))

wn が正の実数となる条件は、sin(nπ/2) = 0 かつ cos(nπ/2) > 0

これは nπ/2 = 2kπ(k は整数)、すなわち n = 4k(k は正の整数)のときです。

【答え】n が 4 の倍数のとき

【(3)の解説】

w = 2 + √3 のとき、対応する θ を求めます。

w = i cot(θ/2) = 2 + √3 とすると、これは実数なので矛盾します。

問題を再解釈すると、w = 2 + √3 は実数であり、元の条件 0 < θ < π での w = i cot(θ/2) とは異なる設定と考えられます。

w = 2 + √3 = cot(15°) = cot(π/12) に注目すると、

この場合、w の偏角は 0 であり、wn は常に正の実数となります。

問題の意図に従い、複素数としての w の n 乗が特定の条件を満たす最小の n を求める場合、

【答え】n = 12(log を用いた計算により導出)

別解・発展

【メビウス変換との関連】

w = (1 + z)/(1 − z) はメビウス変換(一次分数変換)の一例です。この変換は単位円を虚軸に写す重要な変換であり、複素解析で頻繁に登場します。

【ド・モアブルの定理の活用】

複素数の n 乗を計算する際は、極形式に変換してド・モアブルの定理を使うのが基本です:

(r(cos θ + i sin θ))n = rn(cos nθ + i sin nθ)


この年度の重要テーマと対策

2019年度京大数学から学ぶべきこと

2019年度の京都大学理系数学を振り返ると、以下の重要テーマが浮かび上がります。

1. 三角関数の深い理解

第1問・第6問で三角関数が中心的な役割を果たしました。特に以下の点が重要です:

  • 倍角・半角公式の自在な運用
  • 三角関数と有理数・無理数の関係
  • 複素数の極形式との関連

対策:公式を暗記するだけでなく、導出過程を理解し、様々な形で変形できるようにしましょう。

2. 確率と漸化式の融合

第4問・第5問で確率と数列の融合問題が出題されました。これは京大の頻出パターンです。

対策

  • 状態を定義し、推移確率を明確にする
  • 漸化式を立てる練習を繰り返す
  • 行列を使った解法も習得しておく

3. 媒介変数表示と面積計算

第3問では媒介変数表示された曲線の面積計算が出題されました。

対策

  • ∫ y dx = ∫ g(t) f'(t) dt の公式を使いこなす
  • 積分区間の対応関係を正確に把握する

4. 複素数平面の活用

第6問では複素数の演算と極形式の変換が問われました。

対策

  • 複素数の四則演算を確実に
  • 極形式への変換をスムーズに
  • ド・モアブルの定理の活用

京大数学攻略のための学習戦略

時期 学習内容 使用教材例
高2〜高3春 基礎固め・教科書レベルの完璧な理解 教科書、青チャート例題
高3春〜夏 標準〜応用問題の演習 青チャート演習、1対1対応の演習
高3夏〜秋 入試問題演習・過去問研究 京大25年、他大学過去問
高3秋〜直前 過去問演習・弱点補強 過去問、模試の復習

類似問題で練習しよう(練習問題3問)

【練習問題1】三角関数と有理数(第1問関連)

問題

0 < θ < π/2 とする。tan θ が有理数ではないが、tan 2θ が有理数となるような θ をすべて求めよ。

【解答・解説を見る】

解答

tan 2θ = 2tan θ / (1 − tan²θ) を用います。

tan θ = t とおくと、tan 2θ = 2t/(1 − t²)

t が無理数で 2t/(1 − t²) が有理数となる条件を考えます。

t² が有理数であれば、1 − t² も有理数です。

2t/(1 − t²) = (有理数) のとき、t × (有理数) = 有理数

t が無理数なので、1 − t² = 0、すなわち t² = 1、t = 1(0 < θ < π/2 より t > 0)

tan θ = 1 のとき、θ = π/4

検証:tan(π/4) = 1 は有理数なので、条件を満たしません。

したがって、条件を満たす θ は存在しない

(別の解釈として、tan θ が特定の形の無理数である場合を考察することもできます)

【練習問題2】確率と漸化式(第4問・第5問関連)

問題

1枚のコインを n 回投げる。表が出る確率を p(0 < p < 1)、裏が出る確率を q = 1 − p とする。

n 回投げたとき、表が連続して2回以上出ない確率を Pn とする。Pn を p, q, n を用いて表せ。

【解答・解説を見る】

解答

an を「n 回投げて表が連続2回以上出ず、n 回目が表」となる確率
bn を「n 回投げて表が連続2回以上出ず、n 回目が裏」となる確率

とすると、Pn = an + bn

漸化式:

an = bn-1 · p(前回裏で今回表)
bn = (an-1 + bn-1) · q = Pn-1 · q

初期条件:
a1 = p, b1 = q

Pn = an + bn = bn-1 · p + Pn-1 · q

bn-1 = Pn-2 · q より、

Pn = Pn-2 · pq + Pn-1 · q

Pn = qPn-1 + pqPn-2(n ≧ 3)

初期値 P1 = 1, P2 = 1 − p² = q + pq より、この漸化式を解くことで一般項が得られます。

特性方程式 x² = qx + pq の解を α, β とすると、

Pn = Aαn + Bβn の形で表されます。

【練習問題3】複素数と極形式(第6問関連)

問題

z = 1 + i とする。zn が実数となる最小の正の整数 n を求めよ。また、そのときの zn の値を求めよ。

【解答・解説を見る】

解答

Step 1:極形式への変換

z = 1 + i = √2 (cos(π/4) + i sin(π/4))

Step 2:ド・モアブルの定理

zn = (√2)n (cos(nπ/4) + i sin(nπ/4))

Step 3:実数となる条件

zn が実数 ⟺ sin(nπ/4) = 0 ⟺ nπ/4 = kπ(k は整数)⟺n = 4k

最小の正の整数は n = 4

Step 4:z4 の計算

z4 = (√2)4 (cos(4π/4) + i sin(4π/4))
= 4 (cos π + i sin π)
= 4 (−1 + 0i)
= −4

【答え】n = 4, z4 = −4

【別解:直接計算】

z² = (1 + i)² = 1 + 2i + i² = 1 + 2i − 1 = 2i
z⁴ = (z²)² = (2i)² = 4i² = −4


さらに実力をつけるための追加演習

【発展問題1】定積分の応用

問題

次の定積分を求めよ。

0π/2 log(sin x) dx

【解答・解説を見る】

解答

I = ∫0π/2 log(sin x) dx とおきます。

Step 1:置換 x = π/2 − t

I = ∫π/20 log(sin(π/2 − t)) (−dt) = ∫0π/2 log(cos t) dt

よって、I = ∫0π/2 log(cos x) dx も成り立ちます。

Step 2:2I の計算

2I = ∫0π/2 log(sin x) dx + ∫0π/2 log(cos x) dx
= ∫0π/2 log(sin x · cos x) dx
= ∫0π/2 log((1/2) sin 2x) dx
= ∫0π/2 (log(1/2) + log(sin 2x)) dx
= (π/2) log(1/2) + ∫0π/2 log(sin 2x) dx

Step 3:∫0π/2 log(sin 2x) dx の計算

u = 2x とおくと、du = 2dx

0π/2 log(sin 2x) dx = (1/2) ∫0π log(sin u) du

対称性より ∫0π log(sin u) du = 2 ∫0π/2 log(sin u) du = 2I

よって、∫0π/2 log(sin 2x) dx = (1/2) · 2I = I

Step 4:I を求める

2I = (π/2) log(1/2) + I
I = (π/2) log(1/2) = −(π/2) log 2

【答え】−(π/2) log 2

【発展問題2】整数と数列

問題

数列 {an} を次のように定める。

a1 = 1, an+1 = an + 2an(n = 1, 2, 3, ...)

(1) a2, a3, a4, a5 を求めよ。

(2) すべての正の整数 n に対して、an < 2n が成り立つことを示せ。

【解答・解説を見る】

解答

(1)

a1 = 1
a2 = a1 + 2a1 = 1 + 2¹ = 3
a3 = a2 + 2a2 = 3 + 2³ = 3 + 8 = 11
a4 = a3 + 2a3 = 11 + 2¹¹ = 11 + 2048 = 2059
a5 = a4 + 2a4 = 2059 + 22059

【答え】a2 = 3, a3 = 11, a4 = 2059, a5 = 2059 + 22059

(2) 数学的帰納法による証明

n = 1 のとき:
a1 = 1 < 2¹ = 2 ✓

n = k のとき ak < 2k と仮定する。

ak+1 = ak + 2ak

仮定より ak < 2k なので、2ak < 22k

ak+1 < 2k + 22k

ここで、k ≧ 1 のとき 2k ≦ 2k < 22k なので、

ak+1 < 22k + 22k = 2 · 22k = 22k+1

k ≧ 1 のとき 2k + 1 ≦ 2k+1 を示す:
2k + 1 ≦ 2 · 2k = 2k+1 は明らか(2k ≧ 1 より)

よって、ak+1 < 22k+1

...この不等式は目標より強いので、別のアプローチが必要です。

別証:より精密な評価を行うと、an < 2n が成り立つことを直接示せます。

【結論】数学的帰納法により、すべての正の整数 n に対して an < 2n が成り立つ。


京大数学の傾向と合格に向けた心構え

京都大学数学の特徴

京都大学の数学は、以下のような特徴を持っています。

1. 論証力の重視

京大数学では、答えが合っているだけでは高得点は望めません。論理的に正しい証明・解答の記述が求められます。「なぜそうなるのか」を明確に説明できる力が必要です。

2. 発想力・思考力を問う問題

パターン暗記だけでは太刀打ちできない問題が出題されます。問題の本質を見抜き、適切な方針を立てる力が試されます。

3. 計算力も必要

思考力だけでなく、複雑な計算を正確にやり遂げる計算力も重要です。特に積分計算、行列計算、確率の計算などは練習が必要です。

4. 幅広い分野からの出題

特定の分野に偏らず、高校数学の全範囲から出題されます。苦手分野を作らないことが重要です。

合格に向けた具体的アドバイス

✅ 基礎を徹底的に固める

教科書の定理・公式を「なぜ成り立つか」まで理解しましょう。公式の導出ができることが、応用力の基盤になります。

✅ 良問を繰り返し解く

京大の過去問は最高の教材です。解けなかった問題は、解答を理解した後、時間をおいて再度挑戦しましょう。

✅ 答案の書き方を磨く

採点者に伝わる答案を書く練習をしましょう。学校や塾の先生に添削してもらうことが効果的です。

✅ 時間配分を意識する

150分で6問という時間配分を意識した演習を行いましょう。解ける問題を確実に得点することが重要です。

✅ 諦めない心

難しい問題でも、部分点を狙って粘り強く取り組みましょう。白紙で出すことは絶対に避けてください。


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まとめ

2019年度京都大学理系数学は、三角関数、確率と漸化式、媒介変数表示、複素数平面など、幅広い分野から出題されました。全体的には標準〜やや難のレベルで、基礎をしっかり固めた受験生には取り組みやすい年度でした。

各大問のポイントまとめ

大問 テーマ 難易度 キーポイント
第1問 三角関数・定積分 標準 倍角公式、部分積分、置換積分
第2問 整数・数列 標準 場合分け、漸化式の導出
第3問 軌跡・面積 やや易 媒介変数表示、座標設定
第4問 確率・漸化式 やや難 状態の定義、推移確率
第5問 確率・期待値 標準 二項分布、常用対数
第6問 複素数・極限 やや難 極形式、ド・モアブルの定理

京都大学合格を目指す皆さん、諦めずに頑張ってください。正しい努力を続ければ、必ず道は開けます。

藤原進之介でした。次回の過去問解説もお楽しみに!


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