名古屋大学 2018年度 数学 過去問解説|藤原先生と一緒に攻略しよう!

こんにちは!数強塾日本数学塾講師の藤原進之介です。今回は名古屋大学2018年度(平成30年度)前期試験の数学(理系)を徹底解説していきます!

名古屋大学は旧帝国大学の一つとして、毎年多くの受験生が挑戦する難関校です。2018年度の数学は、定積分と極限、整数論、関数の性質、確率と幅広い分野から出題され、数学的な思考力と計算力の両方が問われる良問揃いでした。一緒にじっくり攻略していきましょう!

試験概要・難易度

試験形式と配点

項目 内容
試験時間 150分
出題数 大問4問
配点 500点(理学部・工学部など)
※学部により配点は異なる
出題形式 全問記述式
出題範囲 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B

2018年度の出題分野

  • 第1問:定積分と極限(数学Ⅲ)
  • 第2問:整数の性質・3次方程式(数学A・数学Ⅱ)
  • 第3問:関数の解析・微分法の応用(数学Ⅲ)
  • 第4問:確率・漸化式(数学A・数学B)

全体講評

2018年度の名古屋大学理系数学は、標準〜やや難レベルの問題が中心でした。第1問の定積分極限、第4問の確率は比較的取り組みやすい問題でしたが、第2問の整数問題は論証力が求められ、差がつきやすい問題構成となっていました。

合格に向けては、まず第1問と第4問で確実に得点を重ね、第2問・第3問で部分点を積み上げる戦略が有効です。時間配分としては、各大問に35〜40分程度を目安にしましょう。

大問1:定積分を用いた極限

問題

nを正の整数とし、

In = ∫0π (1/(2+cos x))n dx

とおく。

(1) I1を求めよ。

(2) limn→∞ In を求めよ。

解説・解法のポイント

【(1)の解答】

まず I1 = ∫0π 1/(2+cos x) dx を計算します。

Step 1: ワイエルシュトラス置換の適用

三角関数の有理式の積分には、t = tan(x/2) とおく「ワイエルシュトラス置換」が有効です。

このとき、以下の関係式が成り立ちます:

  • cos x = (1-t²)/(1+t²)
  • sin x = 2t/(1+t²)
  • dx = 2/(1+t²) dt

また、積分範囲は:

  • x = 0 のとき t = tan(0) = 0
  • x = π のとき t = tan(π/2) → ∞

Step 2: 被積分関数の変換

2 + cos x = 2 + (1-t²)/(1+t²) = (2(1+t²) + 1 - t²)/(1+t²) = (3 + t²)/(1+t²)

したがって、

1/(2+cos x) = (1+t²)/(3+t²)

Step 3: 積分の計算

I1 = ∫0 (1+t²)/(3+t²) · 2/(1+t²) dt = ∫0 2/(3+t²) dt

ここで、∫ 1/(a²+t²) dt = (1/a) arctan(t/a) + C を利用します。

a² = 3、すなわち a = √3 として、

I1 = 2 · [1/√3 · arctan(t/√3)]0 = (2/√3) · (π/2 - 0) = π/√3 = (√3/3)π

【答】I1 = (√3/3)π

【(2)の解答】

limn→∞ In を求めます。

Step 1: 被積分関数の評価

0 ≤ x ≤ π において、-1 ≤ cos x ≤ 1 なので、

1 ≤ 2 + cos x ≤ 3

したがって、

1/3 ≤ 1/(2+cos x) ≤ 1

Step 2: n乗の効果を考える

1/(2+cos x) -1、すなわち x ≠ π のときです。

x = π のとき、cos π = -1 より 1/(2+cos π) = 1/(2-1) = 1 となります。

x ≠ π では 1/(2+cos x) < 1 なので、n → ∞ のとき (1/(2+cos x))n → 0 となります。

Step 3: 極限値の決定

被積分関数は x = π という1点でのみ値1をとり、その他の点では0に収束します。

測度論的な議論(または挟み撃ちの原理)により、

0 < In = ∫0π (1/(2+cos x))n dx

について評価を行います。x = π の近傍で cos x ≈ -1 + (x-π)²/2 より、

1/(2+cos x) ≈ 1/(1 + (x-π)²/2)

これをn乗して積分すると、n → ∞ で積分値は0に収束することが示せます。

【答】limn→∞ In = 0

別解・発展

【(2)の別解:挟み撃ちの原理を用いた厳密な証明】

任意の ε > 0 に対して、区間 [π-ε, π] を考えます。

[0, π-ε] では、M = maxx∈[0,π-ε] 1/(2+cos x) < 1 となる定数Mが存在するので、

0π-ε (1/(2+cos x))n dx ≤ (π-ε) · Mn → 0 (n→∞)

また、[π-ε, π] では、

π-επ (1/(2+cos x))n dx ≤ ε · 1 = ε

よって、0 ≤ In ≤ (π-ε)Mn + ε

n → ∞ で 0 ≤ lim In ≤ ε となり、ε は任意なので limn→∞ In = 0


大問2:整数の性質と3次方程式

問題

(1) α² + αβ + β² = 1 をみたす整数 α, β の組をすべて求めよ。

(2) n を奇数とする。このとき α² + αβ + β² = 2n をみたす整数 α, β は存在しないことを示せ。

(3) c を実数とする。このとき3次方程式 x³ - 2018x + c = 0 の解のうち整数であるものは1個以下であることを示せ。

解説・解法のポイント

【(1)の解答】

Step 1: 式の変形

α² + αβ + β² = 1 を満たす整数の組を求めます。

この式は次のように変形できます:

α² + αβ + β² = (α + β/2)² + 3β²/4 = 1

または、別の見方として

4(α² + αβ + β²) = (2α + β)² + 3β² = 4

Step 2: 条件の絞り込み

(2α + β)² + 3β² = 4 において、3β² ≤ 4 より β² ≤ 4/3 < 2

β は整数なので、β = -1, 0, 1 のいずれかです。

Step 3: 各場合の検討

β = 0 のとき:

α² = 1 より α = ±1

∴ (α, β) = (1, 0), (-1, 0)

β = 1 のとき:

(2α + 1)² + 3 = 4 より (2α + 1)² = 1

2α + 1 = ±1 より α = 0 または α = -1

∴ (α, β) = (0, 1), (-1, 1)

β = -1 のとき:

(2α - 1)² + 3 = 4 より (2α - 1)² = 1

2α - 1 = ±1 より α = 0 または α = 1

∴ (α, β) = (0, -1), (1, -1)

【答】(α, β) = (1, 0), (-1, 0), (0, 1), (0, -1), (-1, 1), (1, -1) の6組

【(2)の解答】

Step 1: 背理法の設定

n を奇数として、α² + αβ + β² = 2n を満たす整数 α, β が存在すると仮定します。

Step 2: 偶奇による分類

α, β の偶奇で場合分けします。

Case 1: α, β がともに奇数のとき

α² ≡ 1, β² ≡ 1, αβ ≡ 1 (mod 2)

よって α² + αβ + β² ≡ 1 + 1 + 1 = 3 ≡ 1 (mod 2)

しかし 2n ≡ 0 (mod 2) なので矛盾。

Case 2: α, β の一方が奇数、他方が偶数のとき

α が奇数、β が偶数として一般性を失わない。

α² ≡ 1, β² ≡ 0, αβ ≡ 0 (mod 2)

よって α² + αβ + β² ≡ 1 (mod 2)

同様に矛盾。

Case 3: α, β がともに偶数のとき

α = 2α', β = 2β' とおくと、

4α'² + 4α'β' + 4β'² = 2n

α'² + α'β' + β'² = 2n-2

n が奇数なので n-2 も奇数。同様の議論を繰り返すと、最終的に α', β' がともに偶数でなければならず、無限降下法により矛盾。

【答】背理法と無限降下法により、そのような整数 α, β は存在しない。(証明終)

【(3)の解答】

Step 1: 背理法の設定

3次方程式 x³ - 2018x + c = 0 が異なる2つの整数解 α, β (α ≠ β) を持つと仮定します。

Step 2: 解の条件

α³ - 2018α + c = 0 ... ①

β³ - 2018β + c = 0 ... ②

① - ② より:

α³ - β³ - 2018(α - β) = 0

(α - β)(α² + αβ + β² - 2018) = 0

α ≠ β より α - β ≠ 0 なので、

α² + αβ + β² = 2018

Step 3: 2018の素因数分解

2018 = 2 × 1009

1009 は素数です(確認:31² = 961 < 1009 < 1024 = 32² で、2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31 のいずれでも割り切れない)。

Step 4: mod 4 での考察

整数の2乗を4で割った余りは 0 または 1 です。

α² + αβ + β² を mod 4 で考えます。

αβ について:

  • α, β がともに偶数 → αβ ≡ 0 (mod 4)
  • α, β がともに奇数 → αβ ≡ 1 (mod 4)
  • 一方が偶数、一方が奇数 → αβ ≡ 0 (mod 2)

詳細に場合分けすると、α² + αβ + β² が 2018 ≡ 2 (mod 4) となることは不可能であることが示せます。

具体的には:

  • α, β が共に偶数:α² + αβ + β² ≡ 0 (mod 4)
  • α, β が共に奇数:α² + αβ + β² ≡ 1 + 1 + 1 = 3 (mod 4)
  • 一方が偶数、一方が奇数:α² + αβ + β² ≡ 0 + 0 + 1 = 1 (mod 4) または同様に 1

いずれも 2 (mod 4) にはならないため、α² + αβ + β² = 2018 を満たす整数の組は存在しません。

【答】整数解が2個以上存在すると仮定すると、α² + αβ + β² = 2018 を満たす整数の組が存在することになるが、mod 4 の考察よりこれは不可能。よって整数解は1個以下である。(証明終)

別解・発展

【(2)の別解:mod 3 を用いた証明】

α² + αβ + β² を mod 3 で考えます。

整数の2乗を3で割った余りは 0 または 1 です。

α ≡ 0 (mod 3) のとき α² ≡ 0

α ≡ ±1 (mod 3) のとき α² ≡ 1

すべての場合を検討すると、α² + αβ + β² ≡ 0 (mod 3) となるのは α ≡ β ≡ 0 (mod 3) の場合のみです。

2n を 3 で割った余りは、n が奇数のとき 2n ≡ 2 (mod 3) となります。

したがって、α² + αβ + β² = 2n (n: 奇数) は mod 3 で矛盾します。


大問3:関数の解析(微分法の応用)

問題

a を正の実数とする。関数 f(x) = x³ - 3a²x について、以下の問いに答えよ。

(1) f(x) の極値を求めよ。

(2) 曲線 y = f(x) と x 軸で囲まれた部分の面積 S を a を用いて表せ。

(3) S = 27 となる a の値を求めよ。

解説・解法のポイント

【(1)の解答】

Step 1: 導関数の計算

f(x) = x³ - 3a²x

f'(x) = 3x² - 3a² = 3(x² - a²) = 3(x + a)(x - a)

Step 2: 増減表の作成

x ... -a ... a ...
f'(x) + 0 - 0 +
f(x) 極大 極小

Step 3: 極値の計算

f(-a) = (-a)³ - 3a²(-a) = -a³ + 3a³ = 2a³ (極大値)

f(a) = a³ - 3a² · a = a³ - 3a³ = -2a³ (極小値)

【答】x = -a で極大値 2a³、x = a で極小値 -2a³

【(2)の解答】

Step 1: x 軸との交点

f(x) = x³ - 3a²x = x(x² - 3a²) = x(x - √3·a)(x + √3·a) = 0

x = 0, ±√3·a

Step 2: グラフの概形

曲線 y = f(x) は原点を通り、x = -√3·a, 0, √3·a で x 軸と交わります。

a > 0 のとき:

  • -√3·a < x 0
  • 0 < x < √3·a で f(x) < 0

Step 3: 面積の計算

対称性より、x > 0 の部分の面積を2倍します。

S = 2∫0√3·a |f(x)| dx = 2∫0√3·a (3a²x - x³) dx

0√3·a (3a²x - x³) dx = [3a²·x²/2 - x⁴/4]0√3·a

= 3a² · (3a²)/2 - (3a²)²/4

= 9a⁴/2 - 9a⁴/4

= 18a⁴/4 - 9a⁴/4

= 9a⁴/4

S = 2 × 9a⁴/4 = 9a⁴/2

【答】S = (9/2)a⁴

【(3)の解答】

S = 27 より、

9a⁴/2 = 27

a⁴ = 6

a = ⁴√6 = 61/4

a > 0 より、

【答】a = ⁴√6

別解・発展

【面積計算の別解:1/6公式の応用】

3次関数とx軸で囲まれた面積には「1/6公式」が適用できます。

y = x(x - α)(x - β) (α < β) の場合、

0 から β までの面積 = |β⁴/4 - α·β³/3 + ...| (係数に注意)</p

続きを作成します。

3次関数 y = a(x - α)(x - β)(x - γ) (α < β < γ) が x 軸と3点で交わるとき、囲まれる2つの部分の面積の和は、係数と交点の位置関係から計算できます。

本問では f(x) = x(x - √3a)(x + √3a) なので、α = -√3a, β = 0, γ = √3a です。

3次関数の対称性(点対称)を利用すると、原点に関して対称なので、正の部分と負の部分の面積は等しくなります。


大問4:確率と漸化式(正四面体上の点の移動)

問題

図のような正四面体 ABCD を考える。頂点 A, B, C, D 上を動く2つの点 P, Q があり、以下のルールに従って移動する。

(a) 時刻 0 では、点 P は頂点 A に、点 Q は頂点 C にいる。

(b) 点 P, Q は時刻が 1 増えるごとに独立に、今いる頂点と辺で結ばれている頂点に等確率で移動する。

時刻 n において、P と Q が同じ頂点にいる確率を pn とする。

(1) 時刻 1 において、P と Q がありえる位置の組をすべて列挙せよ。

(2) p1 と p2 を求めよ。

(3) pn を n を用いて表せ。

解説・解法のポイント

【(1)の解答】

Step 1: 正四面体の構造を理解する

正四面体 ABCD において、各頂点は他の3つの頂点と辺で結ばれています。

  • 頂点 A から移動可能:B, C, D
  • 頂点 B から移動可能:A, C, D
  • 頂点 C から移動可能:A, B, D
  • 頂点 D から移動可能:A, B, C

Step 2: 時刻 1 での P の位置

時刻 0 で P は A にいるので、時刻 1 では B, C, D のいずれかに移動します(各 1/3 の確率)。

Step 3: 時刻 1 での Q の位置

時刻 0 で Q は C にいるので、時刻 1 では A, B, D のいずれかに移動します(各 1/3 の確率)。

Step 4: ありえる位置の組

P の位置 × Q の位置 の組み合わせは:

【答】(P, Q) = (B, A), (B, B), (B, D), (C, A), (C, B), (C, D), (D, A), (D, B), (D, D)

計9通り

【(2)の解答】

p1 の計算:

P と Q が同じ頂点にいるのは、(B, B) または (D, D) の場合です。

P(P=B) = 1/3, P(Q=B) = 1/3 より P(P=B かつ Q=B) = 1/3 × 1/3 = 1/9

P(P=D) = 1/3, P(Q=D) = 1/3 より P(P=D かつ Q=D) = 1/3 × 1/3 = 1/9

※ (C, C) は Q が C に留まれないので不可、(A, A) は P が A に留まれないので不可

p1 = 1/9 + 1/9 = 2/9

p2 の計算:

時刻 2 での状況を考えるため、時刻 1 での状態を分類します。

時刻 1 での状態分類:

  • 状態 S(同じ頂点):確率 2/9
  • 状態 D(異なる頂点):確率 7/9

遷移確率の計算:

【状態 S → 状態 S の確率】

P と Q が同じ頂点にいるとき、次の時刻で同じ頂点にいる確率:

各々が3つの頂点のいずれかに移動するので、同じ場所に行く確率 = 3 × (1/3)² = 1/3

【状態 D → 状態 S の確率】

P と Q が異なる頂点にいるとき、状況により異なりますが、対称性を利用して計算します。

時刻 1 で P と Q が異なる頂点にいる場合を細分化:

  • 辺で結ばれている(隣接):例えば (B, A), (B, D), (C, A), (C, B), (C, D), (D, A), (D, B)
  • 実は正四面体ではすべての頂点対が辺で結ばれているので、P ≠ Q なら常に隣接

隣接する2頂点にいる場合、次に同じ頂点に移動する確率:

P が頂点 X、Q が頂点 Y(X と Y は隣接)にいるとする。

P は X から3方向、Q は Y から3方向に移動。

共通の移動先は X, Y 以外の2頂点と、互いの元の位置への移動。

同じ頂点に移動するケース:

  • 両者とも X 以外で Y 以外の頂点(2つある)のうち同じものに移動:2 × (1/3)² = 2/9
  • P が Y に、Q が X に移動:1/3 × 1/3 = 1/9(これは同じ頂点ではない、入れ違い)

正確に計算すると、隣接頂点から同一頂点への確率 = 2/9

よって、

p2 = (2/9) × (1/3) + (7/9) × (2/9) = 2/27 + 14/81 = 6/81 + 14/81 = 20/81

【答】p1 = 2/9、p2 = 20/81

【(3)の解答】

Step 1: 漸化式の設定

状態を以下のように定義します:

  • an:時刻 n で P と Q が同じ頂点にいる確率
  • bn:時刻 n で P と Q が異なる頂点にいる確率

当然、an + bn = 1 です。また、pn = an です。

Step 2: 遷移確率

【同じ頂点 → 同じ頂点】

同じ頂点にいる2点が、次も同じ頂点にいる確率 = 1/3

【異なる頂点 → 同じ頂点】

正四面体で異なる頂点にいる2点が、次に同じ頂点にいる確率 = 2/9

Step 3: 漸化式の導出

an+1 = (1/3)an + (2/9)bn = (1/3)an + (2/9)(1 - an)

an+1 = (1/3)an + 2/9 - (2/9)an = (1/9)an + 2/9

Step 4: 漸化式を解く

an+1 = (1/9)an + 2/9

特性方程式:α = (1/9)α + 2/9 より α = 2/9 × 9/8 = 1/4

an+1 - 1/4 = (1/9)(an - 1/4)

よって、an - 1/4 = (1/9)n(a0 - 1/4)

初期条件:a0 = 0(時刻 0 で P は A、Q は C で異なる)

an - 1/4 = (1/9)n(0 - 1/4) = -(1/4)(1/9)n

an = 1/4 - (1/4)(1/9)n = (1/4)(1 - (1/9)n) = (1/4)(1 - 1/9n)

【答】pn = (1/4)(1 - (1/9)n) = (9n - 1)/(4 · 9n)

検算:

  • n = 1:p1 = (9-1)/(4·9) = 8/36 = 2/9 ✓
  • n = 2:p2 = (81-1)/(4·81) = 80/324 = 20/81 ✓
  • n → ∞:p = 1/4(定常状態として妥当)

別解・発展

【行列を用いた解法】

状態ベクトル vn = (an, bn)T を考え、遷移行列 M を用いると:

M =
| 1/3   2/9 |
| 2/3   7/9 |

vn = Mn v0 として、行列のn乗を対角化により計算することもできます。

固有値は λ = 1, 1/9 で、定常分布は (1/4, 3/4)T となり、上記の結果と一致します。


この年度の重要テーマと対策

1. 定積分と極限の融合問題

第1問のように、定積分の値を含む数列の極限を求める問題は名古屋大学で頻出です。

対策ポイント:

  • ワイエルシュトラス置換(t = tan(x/2))をマスターする
  • 被積分関数の評価と極限の関係を理解する
  • 挟み撃ちの原理を使った証明に慣れる
  • 区分求積法との関連も押さえておく

2. 整数論の論証力

第2問は整数の性質に関する証明問題で、名古屋大学らしい骨のある出題でした。

対策ポイント:

  • 合同式(mod計算)を自在に使えるようにする
  • 背理法と無限降下法の組み合わせを練習する
  • 素因数分解を活用した議論に慣れる
  • α² + αβ + β² の形は複素数(1のω乗根)との関連も意識する

3. 3次関数の解析

第3問は微分法の基本的な応用問題ですが、計算ミスなく完答することが重要です。

対策ポイント:

  • 増減表を正確に書く習慣をつける
  • 3次関数とx軸で囲まれる面積の公式を確認する
  • パラメータを含む問題での場合分けに注意する

4. 確率と漸化式

第4問は確率漸化式の典型問題ですが、状態設定と遷移確率の計算が鍵となります。

対策ポイント:

  • 状態の分類を適切に行う(対称性を活用)
  • 遷移確率を正確に計算する
  • 漸化式を解く技術(特性方程式、等比数列への帰着)
  • 初期条件の確認と検算を怠らない

類似問題で練習しよう(練習問題3問)

【練習問題1】定積分と極限

n を正の整数とし、

Jn = ∫0π/2 sinnx dx

とおく。

(1) Jn と Jn-2 の関係式(漸化式)を求めよ。

(2) J4 を求めよ。

(3) limn→∞ (Jn/Jn-1) を求めよ。

【解答・解説】

(1) 漸化式の導出

Jn = ∫0π/2 sinnx dx = ∫0π/2 sinn-1x · sin x dx

部分積分を適用:u = sinn-1x, dv = sin x dx とおくと、

du = (n-1)sinn-2x · cos x dx, v = -cos x

Jn = [-sinn-1x · cos x]0π/2 + (n-1)∫0π/2 sinn-2x · cos²x dx

= 0 + (n-1)∫0π/2 sinn-2x · (1 - sin²x) dx

= (n-1)Jn-2 - (n-1)Jn

よって、nJn = (n-1)Jn-2

【答】Jn = ((n-1)/n)Jn-2

(2) J4 の計算

J0 = ∫0π/2 1 dx = π/2

J2 = (1/2)J0 = π/4

J4 = (3/4)J2 = (3/4) · (π/4) = 3π/16

【答】J4 = 3π/16

(3) 極限の計算

Jn/Jn-1 について、0 ≤ x ≤ π/2 で sin x ≤ 1 より、

Jn+1 ≤ Jn ≤ Jn-1

よって Jn+1/Jn ≤ 1 ≤ Jn-1/Jn = n/(n-1)

また、Jn+1/Jn = n/(n+1) より、

n/(n+1) ≤ Jn/Jn-1 ≤ 1

挟み撃ちの原理より、

【答】limn→∞ (Jn/Jn-1) = 1


【練習問題2】整数問題

(1) x² + y² = z² を満たす正の整数の組 (x, y, z) で、x, y, z がすべて奇数であるものは存在しないことを示せ。

(2) 方程式 x² + y² = 3z² を満たす整数の組 (x, y, z) は (0, 0, 0) のみであることを示せ。

【解答・解説】

(1) の証明

x, y, z がすべて奇数と仮定します。

奇数の2乗を4で割った余りは1なので、

  • x² ≡ 1 (mod 4)
  • y² ≡ 1 (mod 4)
  • z² ≡ 1 (mod 4)

すると x² + y² ≡ 2 (mod 4) ですが、z² ≡ 1 (mod 4) なので矛盾。

【答】x, y, z がすべて奇数であるピタゴラス数は存在しない。(証明終)

(2) の証明

x² + y² = 3z² を満たす整数の組で (0, 0, 0) 以外のものが存在すると仮定します。

x, y, z の最大公約数を d として、x = dx', y = dy', z = dz' (gcd(x', y', z') = 1) とおくと、

x'² + y'² = 3z'² を満たし、x', y', z' のうち少なくとも1つは3で割り切れません。

mod 3 で考えると、整数の2乗は 0 または 1 (mod 3) です。

x'² + y'² ≡ 0 (mod 3) となるには x' ≡ y' ≡ 0 (mod 3) が必要。

しかし gcd(x', y', z') = 1 の条件に矛盾するか、または無限降下法により矛盾が生じます。

【答】(x, y, z) = (0, 0, 0) のみ。(証明終)


【練習問題3】確率漸化式

1辺の長さが1の正六角形 ABCDEF がある。点 P は最初頂点 A にいて、サイコロを振って出た目に応じて次のように移動する。

  • 1, 2 の目:時計回りに隣の頂点に移動
  • 3, 4 の目:反時計回りに隣の頂点に移動
  • 5, 6 の目:対角の頂点に移動

サイコロを n 回振った後、点 P が頂点 A にいる確率を pn とする。

(1) p1, p2 を求めよ。

(2) pn を n を用いて表せ。

【解答・解説】

(1) p1, p2 の計算

1回振った後に A にいる確率:

A から移動すると B, F, D のいずれかに行くので、A には戻れません。

p1 = 0

2回振った後に A にいる確率:

1回目で B, F, D に移動し、2回目で A に戻る場合を考えます。

  • A→B(確率1/3)→A(確率1/3):1/9
  • A→F(確率1/3)→A(確率1/3):1/9
  • A→D(確率1/3)→A(確率1/3):1/9

p2 = 1/9 + 1/9 + 1/9 = 1/3

【答】p1 = 0、p2 = 1/3

(2) pn の一般項

対称性を利用して状態を分類します:

  • 状態α:A にいる(確率 an
  • 状態β:B または F にいる(確率 bn
  • 状態γ:C または E にいる(確率 cn
  • 状態δ:D にいる(確率 dn

遷移を考えると、

an+1 = (1/3)bn + (1/3)dn

bn+1 = (2/3)an + (1/3)cn

cn+1 = (2/3)bn + (2/3)dn

dn+1 = (1/3)an + (1/3)cn

対称性より、定常状態では a = d, b = c となることを利用し、漸化式を解くと:

【答】p

続きを作成します。

漸化式を詳しく解いていきます。

an + bn + cn + dn = 1 と対称性 an = dn(A と D は対角)、bn = cn(B,F と C,E は対称)を利用します。

簡略化して、

  • an:A にいる確率
  • dn:D にいる確率(= an と対称)
  • sn = 1 - an - dn:B, C, E, F のいずれかにいる確率

A からの遷移:

  • A → B:確率 1/3(時計回り)
  • A → F:確率 1/3(反時計回り)
  • A → D:確率 1/3(対角)

B, F からの A への遷移:各 1/3

D からの A への遷移:1/3

漸化式を整理すると:

an+1 = (1/3) × (A の隣 B, F にいる確率) + (1/3) × (対角 D にいる確率)

詳細な計算により、

an+1 = (1/3)(1 - an)

これは、「A 以外にいれば、次に A に移動する確率が 1/3」という簡潔な関係です。

ただし、正六角形の対称性をより正確に考慮すると、A に隣接する頂点(B, F)からは確率 1/3 で A に移動でき、対角の D からも確率 1/3 で A に移動できます。C, E からは直接 A には移動できません。

正確な漸化式:

状態を再定義します:

  • an:A にいる確率
  • bn:B または F にいる確率(A に隣接)
  • cn:C または E にいる確率(A から2つ離れている)
  • dn:D にいる確率(A の対角)

初期条件:a0 = 1, b0 = c0 = d0 = 0

遷移確率:

  • A から:B へ 1/3、F へ 1/3、D へ 1/3 → b に 2/3、d に 1/3
  • B から:A へ 1/3、C へ 1/3、E へ 1/3 → a に 1/3、c に 2/3
  • C から:B へ 1/3、D へ 1/3、F へ 1/3 → b に 2/3、d に 1/3
  • D から:C へ 1/3、E へ 1/3、A へ 1/3 → a に 1/3、c に 2/3

漸化式:

an+1 = (1/3)bn + (1/3)dn

bn+1 = (2/3)an + (2/3)cn

cn+1 = (2/3)bn + (2/3)dn

dn+1 = (1/3)an + (1/3)cn

対称性より an = dn、bn = cn が成り立つことを確認できます。

un = an + dn、vn = bn + cn とおくと(un + vn = 1)、

an+1 + dn+1 = (1/3)(bn + cn) + (1/3)(an + cn) を整理すると、

un+1 = (1/3)vn + (1/3)un/2 × 2 = ...

より簡潔に、an = dn を用いて:

an+1 = (1/3)bn + (1/3)an

また、an + bn/2 + cn/2 + dn = 1、対称性より 2an + bn = 1(cn = bn、dn = an

したがって bn = 1 - 2an を代入:

an+1 = (1/3)(1 - 2an) + (1/3)an = 1/3 - (2/3)an + (1/3)an = 1/3 - (1/3)an

an+1 = -(1/3)an + 1/3

特性方程式:α = -(1/3)α + 1/3 より α = 1/4

an+1 - 1/4 = -(1/3)(an - 1/4)

an - 1/4 = (-1/3)n(a0 - 1/4) = (-1/3)n(1 - 1/4) = (3/4)(-1/3)n

an = 1/4 + (3/4)(-1/3)n = (1/4)(1 + 3·(-1/3)n)

別の形で書くと:

pn = (1/4) + (3/4)·(-1)n/3n = (3n + 3·(-1)n)/(4·3n)

【答】pn = (1/4)(1 + 3·(-1/3)n) = (3n + 3·(-1)n)/(4·3n)

検算:

  • n = 0:p0 = (1 + 3)/4 = 1 ✓(最初 A にいる)
  • n = 1:p1 = (3 - 3)/12 = 0 ✓
  • n = 2:p2 = (9 + 3)/36 = 12/36 = 1/3 ✓
  • n → ∞:p = 1/4(定常分布、6頂点中で対称性を考慮すると妥当)

名古屋大学数学の傾向と対策まとめ

出題傾向

名古屋大学の理系数学は、以下の特徴があります:

分野 出題頻度 特徴
微分積分(数Ⅲ) ★★★★★ 定積分の計算、極限との融合、面積・体積
整数の性質 ★★★★☆ 合同式、背理法、無限降下法を用いた証明
確率・場合の数 ★★★★☆ 漸化式との融合、条件付き確率
ベクトル・空間図形 ★★★☆☆ 空間座標、内積の活用
複素数平面 ★★★☆☆ 図形への応用、ド・モアブルの定理
数列 ★★★☆☆ 漸化式、数学的帰納法

合格のための学習戦略

【Phase 1:基礎固め(高2〜高3夏)】

  • 教科書レベルの例題・章末問題を完璧にする
  • 青チャートや Focus Gold の例題を繰り返し解く
  • 計算力を鍛える(特に積分計算、因数分解)

【Phase 2:応用力養成(高3夏〜秋)】

  • 「1対1対応の演習」「標準問題精講」で典型問題をマスター
  • 証明問題の書き方を意識する
  • 複数分野の融合問題に取り組む

【Phase 3:実戦演習(高3秋〜入試直前)】

  • 名古屋大学の過去問を最低10年分解く
  • 時間を測って本番形式で演習
  • 他の旧帝大(東北大、九大、北大など)の類似問題も演習

時間配分の目安

試験時間150分、大問4問の場合:

  • 最初の10分:全問を俯瞰し、解きやすい問題を特定
  • 各大問30〜35分:計算問題は丁寧に、証明問題は論理を明確に
  • 最後の10分:見直しと検算

「完答できる問題を確実に」「部分点を稼げる問題で粘る」という意識が大切です。


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おわりに

2018年度の名古屋大学数学は、定積分と極限、整数論、微分法、確率漸化式と、バランスの取れた出題でした。特に第2問の整数問題は、合同式や背理法を駆使する必要があり、日頃からの論証力の訓練が問われる良問でした。

名古屋大学合格のためには:

  1. 基礎計算力の徹底:複雑な積分計算も素早く正確に
  2. 論証力の強化:背理法、数学的帰納法、合同式の活用
  3. 時間管理:150分で4問、配分を意識した演習
  4. 記述力の向上:採点者に伝わる答案の書き方

これらを意識して、計画的に学習を進めてください。

この記事が、名古屋大学を目指す皆さんの参考になれば幸いです。質問や相談があれば、数強塾日本数学塾までお気軽にお問い合わせください!

執筆:藤原進之介
数強塾・日本数学塾 講師
東京大学理学部数学科卒

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