名古屋大学 1997年度 数学 過去問解説|藤原進之介先生と一緒に完全攻略!
こんにちは!日本数学塾・数強塾講師の藤原進之介です。
今回は、名古屋大学 1997年度(平成9年度)前期日程 理系数学の過去問を徹底解説していきます!
名古屋大学は、旧帝国大学の一つとして高い学術水準を誇り、毎年多くの受験生が挑戦する難関国立大学です。名大数学は、基本的な計算力と論理的な思考力の両方が問われる良問が多く、しっかりとした対策が必要です。
この記事では、1997年度の全問題について、問題文・解説・解法のポイント・別解まで余すところなくお伝えします。過去問演習にぜひ活用してください!
試験概要・難易度
1997年度(平成9年度)名古屋大学 前期日程 理系数学 概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日程 | 前期日程(1997年2月下旬実施) |
| 試験時間 | 150分(2時間30分) |
| 問題数 | 4問(第4問は選択問題) |
| 出題分野 | ベクトル、整数値多項式、数列と極限、確率(選択) |
| 配点 | 理学部・工学部など:500点満点中の数学配点は学部により異なる |
全体講評
1997年度の名古屋大学理系数学は、「標準~やや難」レベルの問題がバランスよく配置された年度でした。
第1問は三角形の重心に関するベクトルの問題で、基本的な位置ベクトルの扱いができれば解ける標準問題です。
第2問は整数値多項式に関する証明問題で、連続する整数での値が整数であれば全ての整数で整数値となることを示す、名大らしい論証力が試される問題です。
第3問は数列の極限を求める問題で、はさみうちの原理を用いた典型的な処理が必要となります。
第4問は選択問題で、(a)は直方体を用いたサイコロの確率問題、(b)は(2問目の発展として)3次関数の整数値に関する証明問題でした。
全体として、計算力よりも論理的思考力・証明力が重視された出題傾向であり、普段から「なぜそうなるのか」を考えながら学習している受験生に有利な問題構成だったと言えます。
大問1:三角形の重心とベクトル
問題
三角形ABCの内部に点Pがあり、
AP⃗ + 2BP⃗ + 3CP⃗ = 0⃗
が成り立っている。
(1) 点Pは三角形ABCのどのような点か。位置ベクトルを用いて説明せよ。
(2) 三角形ABCの面積をS、三角形PBCの面積をS₁、三角形PCAの面積をS₂、三角形PABの面積をS₃とするとき、S₁:S₂:S₃を求めよ。
解説・解法のポイント
【基本方針】
この問題は、ベクトルの条件式から点Pの位置を特定し、さらに面積比を求める典型的な問題です。まず、位置ベクトルを用いてPの位置を表し、次に三角形の面積比との関係を考えます。
【(1)の解答】
点Oを原点とし、A, B, C, Pの位置ベクトルをそれぞれ a⃗, b⃗, c⃗, p⃗ とします。
条件式 AP⃗ + 2BP⃗ + 3CP⃗ = 0⃗ を位置ベクトルで書き換えると:
(p⃗ - a⃗) + 2(p⃗ - b⃗) + 3(p⃗ - c⃗) = 0⃗
展開して整理すると:
p⃗ - a⃗ + 2p⃗ - 2b⃗ + 3p⃗ - 3c⃗ = 0⃗
6p⃗ = a⃗ + 2b⃗ + 3c⃗
p⃗ = (a⃗ + 2b⃗ + 3c⃗)/6
これを別の形で表すと:
p⃗ = (1/6)a⃗ + (2/6)b⃗ + (3/6)c⃗ = (1/6)a⃗ + (1/3)b⃗ + (1/2)c⃗
ここで、係数の和が 1/6 + 1/3 + 1/2 = 1/6 + 2/6 + 3/6 = 6/6 = 1 となっていることを確認できます。
【答え】点Pは、A, B, Cを頂点とする三角形において、各頂点に対して重み1, 2, 3をつけた重心(加重重心・質点系の重心)です。
【(2)の解答】
三角形の面積比について、重要な定理を使います。
【定理】三角形ABCの内部の点Pについて、AP⃗ = sAB⃗ + tAC⃗ と表されるとき(ただし s > 0, t > 0, s + t < 1)、
△PBC : △PCA : △PAB = (1-s-t) : t : s
また、別のアプローチとして、条件式の係数を使う方法があります。
AP⃗ + 2BP⃗ + 3CP⃗ = 0⃗ において、係数は 1, 2, 3 です。
実は、この係数の比が面積比に対応するという重要な性質があります:
△PBC : △PCA : △PAB = 1 : 2 : 3
【証明】
p⃗ = (1/6)a⃗ + (2/6)b⃗ + (3/6)c⃗ において、係数1/6, 2/6, 3/6が各頂点の「重み」を表しています。
三角形ABCの面積をSとすると、点Pから各辺に下ろした垂線を考えることで:
- △PBC の面積 S₁ は、Aの重み1/6に比例
- △PCA の面積 S₂ は、Bの重み2/6に比例
- △PAB の面積 S₃ は、Cの重み3/6に比例
したがって、S₁ : S₂ : S₃ = 1 : 2 : 3
別解・発展
【別解:座標を設定する方法】
具体的に座標を設定して計算する方法もあります。
A(0, 0), B(6, 0), C(0, 6) とおくと、三角形ABCの面積は S = 18 です。
p⃗ = (a⃗ + 2b⃗ + 3c⃗)/6 = ((0,0) + 2(6,0) + 3(0,6))/6 = (12, 18)/6 = (2, 3)
よって P(2, 3) となります。
各三角形の面積を計算:
- △PBC = (1/2)|6·3 - 0·2 + 0·6 - 6·3 + 0·0 - 0·6| = (1/2)|18 - 0 + 0 - 18 + 0 - 0| ... (座標計算)
(実際に計算すると S₁ = 3, S₂ = 6, S₃ = 9 となり、S₁ : S₂ : S₃ = 1 : 2 : 3 が確認できます)
【発展:一般化】
αAP⃗ + βBP⃗ + γCP⃗ = 0⃗ のとき、△PBC : △PCA : △PAB = α : β : γ が成り立ちます。この関係は、重心座標(barycentric coordinates)として知られています。
大問2:整数値多項式
問題
a, b, c を実数とし、f(x) = ax² + bx + c を考える。
(1) f(-1), f(0), f(1) がすべて整数ならば、すべての整数 n に対し、f(n) は整数であることを示せ。
(2) f(1996), f(1997), f(1998) がすべて整数の場合はどうか?
解説・解法のポイント
【この問題の本質】
この問題は「整数値多項式」に関する重要な定理を導く問題です。連続する整数での値が整数であれば、全ての整数で整数値となるという美しい性質を証明します。
【(1)の解答】
Step 1:条件を整理する
f(-1), f(0), f(1) が整数であることから:
- f(-1) = a - b + c ∈ ℤ
- f(0) = c ∈ ℤ
- f(1) = a + b + c ∈ ℤ
Step 2:a, b の性質を調べる
f(0) = c は整数です。
f(1) - f(0) = (a + b + c) - c = a + b も整数です。
f(-1) - f(0) = (a - b + c) - c = a - b も整数です。
したがって:
- (a + b) + (a - b) = 2a は整数
- (a + b) - (a - b) = 2b は整数
つまり、2a ∈ ℤ, 2b ∈ ℤ, c ∈ ℤ であることがわかりました。
Step 3:f(n) が整数であることを示す
任意の整数 n に対して、f(n) = an² + bn + c を変形します。
【重要な変形】
f(n) = an² + bn + c = a·n(n-1) + (a+b)n + c
なぜこの変形が有効かというと:
- n(n-1) は連続する2整数の積なので、常に偶数(2で割り切れる)
- したがって a·n(n-1) = (2a)·(n(n-1)/2) は整数(2a が整数、n(n-1)/2 も整数)
また:
- (a+b)n は整数(a+b ∈ ℤ より)
- c は整数
よって、f(n) = a·n(n-1) + (a+b)n + c は整数の和となり、すべての整数 n に対して f(n) は整数である。 ∎
【(2)の解答】
結論:f(1996), f(1997), f(1998) がすべて整数ならば、すべての整数 n に対し f(n) は整数である。
証明:
g(x) = f(x + 1997) とおきます。すると:
g(x) = a(x+1997)² + b(x+1997) + c
展開すると g(x) も x の2次関数であり、g(x) = a'x² + b'x + c' の形で書けます(a' = a)。
このとき:
- g(-1) = f(1996) ∈ ℤ
- g(0) = f(1997) ∈ ℤ
- g(1) = f(1998) ∈ ℤ
(1)の結果より、すべての整数 m に対して g(m) は整数です。
任意の整数 n に対して、m = n - 1997 とおくと m は整数であり、
f(n) = f((n-1997) + 1997) = g(n - 1997) = g(m)
g(m) は整数なので、f(n) も整数です。
よって、すべての整数 n に対して f(n) は整数である。 ∎
別解・発展
【別解:差分を用いる方法】
整数値多項式の一般的な判定法として、「差分演算子」を用いる方法があります。
Δf(x) = f(x+1) - f(x) と定義すると:
- Δf(x) = a(x+1)² + b(x+1) + c - (ax² + bx + c) = 2ax + a + b
- Δ²f(x) = Δf(x+1) - Δf(x) = 2a
f(n) が整数 ⟺ f(n₀), Δf(n₀), Δ²f(n₀), ... がすべて整数(ある整数 n₀ に対して)
この条件は、連続する整数での値から帰納的に判定できます。
【発展:n次多項式への一般化】
n次多項式 f(x) について、次が成り立ちます:
定理:f(0), f(1), f(2), ..., f(n) がすべて整数ならば、すべての整数 m に対して f(m) は整数である。
これは、f(x) を「二項係数型の基底」C(x,0), C(x,1), ..., C(x,n) で展開できることから従います。
大問3:数列の極限(はさみうちの原理)
問題
数列 {aₙ} が次の条件を満たすとする:
Σₖ₌₁ⁿ aₖ² = n(n+1)(2n+1)/6
すべての n について aₙ > 0 とする。
(1) 一般項 aₙ を求めよ。
(2) lim(n→∞) (1/n²) Σₖ₌₁ⁿ aₖ を求めよ。
解説・解法のポイント
【(1)の解答】
Step 1:Sₙ から aₙ を求める公式
Sₙ = Σₖ₌₁ⁿ aₖ² = n(n+1)(2n+1)/6 とおきます。
これは実は、1² + 2² + ... + n² = n(n+1)(2n+1)/6 という有名な公式の右辺と同じ形です!
一般項を求めるには、n ≥ 2 のとき:
aₙ² = Sₙ - Sₙ₋₁
Step 2:計算
Sₙ = n(n+1)(2n+1)/6
Sₙ₋₁ = (n-1)n(2n-1)/6
aₙ² = Sₙ - Sₙ₋₁ = [n(n+1)(2n+1) - (n-1)n(2n-1)] / 6
分子を展開:
- n(n+1)(2n+1) = n(2n² + 3n + 1) = 2n³ + 3n² + n
- (n-1)n(2n-1) = n(2n² - 3n + 1) = 2n³ - 3n² + n
差をとると:
(2n³ + 3n² + n) - (2n³ - 3n² + n) = 6n²
よって aₙ² = 6n²/6 = n²
aₙ > 0 より、aₙ = n
n = 1 のとき:a₁² = S₁ = 1·2·3/6 = 1 より a₁ = 1 ✓
【答え】aₙ = n
【(2)の解答】
aₙ = n より、求める極限は:
lim(n→∞) (1/n²) Σₖ₌₁ⁿ k = lim(n→∞) (1/n²) · n(n+1)/2
= lim(n→∞) (n+1)/(2n) = lim(n→∞) (1 + 1/n)/2 = 1/2
【別の解釈:面積による評価】
この問題の本質は、和 Σₖ₌₁ⁿ k を積分で近似できることです。
∫₀ⁿ x dx = n²/2
より、(1/n²) Σₖ₌₁ⁿ k ≈ (1/n²) · (n²/2) = 1/2 という直感が得られます。
別解・発展
【はさみうちの原理による厳密な証明】
一般に、f(x) = √(2x+1) のような関数を使って和を上下から評価し、はさみうちの原理を適用する方法があります。
√(2k+1) に対して:
∫ₖ₋₁ᵏ √(2x+1) dx ≤ √(2k+1) ≤ ∫ₖᵏ⁺¹ √(2x+1) dx
これを k = 1, 2, ..., n について足し合わせ、極限を求めることで厳密な証明ができます。
【発展:リーマン和との関係】
この問題は、リーマン和の考え方と密接に関連しています。
(1/n) Σₖ₌₁ⁿ (k/n) → ∫₀¹ x dx = 1/2 (n→∞)
これは区分求積法の典型例です。
大問4(a):直方体サイコロの確率
問題
均質な材質で出来た直方体の各面に1から6までの数を1つずつ書いてサイコロの代わりにする(1の反対側が6とは限らない)。
ある数の出る確率が 1/9 であり、別のある数が出る確率が 1/4 であるとする。
このサイコロを1回投げたときに出る数の期待値が 7/2 であるとき、各面に書かれた数を求めよ。
解説・解法のポイント
【直方体サイコロの性質】
直方体には3組の対面があり、各組は同じ確率で出ます。これを p, q, r とおくと:
2p + 2q + 2r = 1 より p + q + r = 1/2
問題より、ある確率が 1/9、別の確率が 1/4 なので、これらは異なる組の面の確率です。
【解答】
Step 1:確率の決定
3組の対面の確率を {p, p}, {q, q}, {r, r} とします。
1/9 と 1/4 が異なる組に属するので、p = 1/18, q = 1/8 などではなく、対面の確率として考えます。
実際には:一つの面が出る確率が 1/9 なので、その対面も 1/9
別の面が出る確率が 1/4 なので、その対面も 1/4
よって 2 × (1/9) + 2 × (1/4) + 2r = 1
2/9 + 1/2 + 2r = 1
2r = 1 - 2/9 - 1/2 = 18/18 - 4/18 - 9/18 = 5/18
r = 5/36
各組の確率:{1/9, 1/9}, {1/4, 1/4}, {5/36, 5/36}
検算:2/9 + 1/2 + 10/36 = 8/36 + 18/36 + 10/36 = 36/36 = 1 ✓
Step 2:期待値の条件
6つの面に書かれた数を a, b, c, d, e, f(対面は(a,b), (c,d), (e,f))とすると:
確率 1/9 の組:{a, b}(a + b に対して確率 2/9 が寄与)
確率 1/4 の組:{c, d}
確率 5/36 の組:{e, f}
期待値 E = (a + b)(1/9) + (c + d)(1/4) + (e + f)(5/36) = 7/2
また、a + b + c + d + e + f = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 = 21
Step 3:連立方程式を解く
a + b = α, c + d = β, e + f = γ とおく。
α + β + γ = 21
(α/9) + (β/4) + (5γ/36) = 7/2
36倍して:4α + 9β + 5γ = 126
続きを作成いたします。
---
α + β + γ = 21 より γ = 21 - α - β を代入:
4α + 9β + 5(21 - α - β) = 126
4α + 9β + 105 - 5α - 5β = 126
-α + 4β = 21
α = 4β - 21
Step 4:整数条件からの絞り込み
α = a + b は1〜6の異なる2数の和なので、3 ≤ α ≤ 11(最小は1+2=3、最大は5+6=11)
同様に β, γ も 3 ≤ β, γ ≤ 11
α = 4β - 21 より:
- β = 6 のとき α = 24 - 21 = 3 ✓
- β = 7 のとき α = 28 - 21 = 7 ✓
- β = 8 のとき α = 32 - 21 = 11 ✓
それぞれについて γ = 21 - α - β を計算:
- β = 6, α = 3 のとき γ = 21 - 3 - 6 = 12(11を超えるので不適)
- β = 7, α = 7 のとき γ = 21 - 7 - 7 = 7 ✓
- β = 8, α = 11 のとき γ = 21 - 11 - 8 = 2(3未満なので不適)
よって α = 7, β = 7, γ = 7 が唯一の解です。
Step 5:各面の数の決定
a + b = 7, c + d = 7, e + f = 7 となる組み合わせ:
- {1, 6}, {2, 5}, {3, 4} の3組
確率 1/9 の対面:{a, b}
確率 1/4 の対面:{c, d}
確率 5/36 の対面:{e, f}
どの組がどの確率に対応するかは、直方体の形状(辺の比)によって決まりますが、問題では各面に書かれた数を求めればよいので:
【答え】
確率 1/9 で出る対面:1と6(または2と5、または3と4)
確率 1/4 で出る対面:2と5(または1と6、または3と4)
確率 5/36 で出る対面:3と4(または1と6、または2と5)
(3組 {1,6}, {2,5}, {3,4} がそれぞれ異なる確率の対面となる。どの組がどの確率かは問題の条件だけでは一意に定まらない)
別解・発展
【直方体の辺の比との関係】
直方体の3辺の長さを a, b, c とすると、各対面が上を向く確率は面積に比例します:
- bc に比例する面が2つ
- ca に比例する面が2つ
- ab に比例する面が2つ
確率の比 1/9 : 1/4 : 5/36 = 4 : 9 : 5 から、面積比は 4 : 9 : 5 となります。
大問4(b):3次関数の整数値多項式
問題
a, b, c, d を実数とし、f(x) = ax³ + bx² + cx + d を考える。
f(-1), f(0), f(1), f(2) がすべて整数ならば、すべての整数 n に対し、f(n) は整数であることを示せ。
解説・解法のポイント
【方針】
大問2と同様のアプローチを用います。連続する4つの整数での値が整数であれば、全ての整数での値が整数となることを示します。
【解答】
Step 1:条件の整理
f(-1), f(0), f(1), f(2) が整数より:
- f(-1) = -a + b - c + d ∈ ℤ
- f(0) = d ∈ ℤ
- f(1) = a + b + c + d ∈ ℤ
- f(2) = 8a + 4b + 2c + d ∈ ℤ
Step 2:係数の性質を導く
差分を考えます:
- f(1) - f(0) = a + b + c ∈ ℤ
- f(0) - f(-1) = a - b + c ∈ ℤ
- f(2) - f(1) = 7a + 3b + c ∈ ℤ
2階差分:
- [f(1) - f(0)] - [f(0) - f(-1)] = (a + b + c) - (a - b + c) = 2b ∈ ℤ
- [f(2) - f(1)] - [f(1) - f(0)] = (7a + 3b + c) - (a + b + c) = 6a + 2b ∈ ℤ
3階差分:
- (6a + 2b) - 2b = 6a ∈ ℤ
よって 6a ∈ ℤ, 2b ∈ ℤ, d ∈ ℤ
また、a + b + c ∈ ℤ と 2b ∈ ℤ、6a ∈ ℤ から c の性質も導けます。
Step 3:f(n) の変形
3次多項式を「二項係数型」で表現します:
f(x) = ax³ + bx² + cx + d
ここで、次の恒等式を利用します:
- x³ = x(x-1)(x-2) + 3x(x-1) + x
- x² = x(x-1) + x
したがって:
f(x) = a[x(x-1)(x-2) + 3x(x-1) + x] + b[x(x-1) + x] + cx + d
= ax(x-1)(x-2) + (3a+b)x(x-1) + (a+b+c)x + d
Step 4:各項が整数となることの確認
整数 n に対して:
- n(n-1)(n-2):連続する3整数の積なので、6で割り切れる(6a ∈ ℤ より、a·n(n-1)(n-2) = (6a)·[n(n-1)(n-2)/6] ∈ ℤ)
- n(n-1):連続する2整数の積なので、2で割り切れる
- (3a+b):6a ∈ ℤ, 2b ∈ ℤ より、6a + 2b = 2(3a+b) ∈ ℤ なので 2(3a+b) ∈ ℤ。よって (3a+b)·n(n-1) = [2(3a+b)]·[n(n-1)/2] ∈ ℤ
- (a+b+c)n:a+b+c ∈ ℤ より整数
- d:整数
よって、すべての整数 n に対して f(n) は整数である。 ∎
別解・発展
【二項係数による表現】
一般に、n次多項式 f(x) は次のように表せます:
f(x) = Σₖ₌₀ⁿ Δᵏf(0) · C(x, k)
ここで C(x, k) = x(x-1)···(x-k+1)/k! は二項係数の一般化で、x が整数のとき C(x, k) は整数です。
連続する n+1 個の整数での値が整数 ⟺ Δᵏf(0) がすべて整数(k = 0, 1, ..., n)
この同値性から、整数値多項式の判定が可能になります。
この年度の重要テーマと対策
1997年度名古屋大学数学の特徴
この年度の出題から見える重要なテーマを整理します。
【テーマ1:ベクトルと図形の関係】
第1問では、ベクトルの条件式から点の位置を特定し、面積比を求める問題が出題されました。
対策ポイント:
- 位置ベクトルの基本(内分点、重心など)を確実にマスター
- αAP⃗ + βBP⃗ + γCP⃗ = 0⃗ 型の問題に慣れる
- ベクトルと面積比の関係(重心座標)を理解
【テーマ2:整数論・証明問題】
第2問と第4問(b)では、整数値多項式の証明問題が出題されました。
対策ポイント:
- 「差分」の考え方に慣れる(Δf(x) = f(x+1) - f(x))
- 連続整数の積の性質(n(n-1)は偶数、n(n-1)(n-2)は6の倍数など)
- 二項係数による多項式の表現を知っておく
- 「平行移動」による帰着(問題を簡単な形に変換)
【テーマ3:数列と極限】
第3問では、和から一般項を求め、極限を計算する問題が出題されました。
対策ポイント:
- Sₙ から aₙ を求める基本操作(aₙ = Sₙ - Sₙ₋₁)
- はさみうちの原理の使い方
- 区分求積法との関連を意識
【テーマ4:場合の数・確率】
第4問(a)では、直方体サイコロという珍しい設定での確率問題が出題されました。
対策ポイント:
- 条件から未知数を絞り込む論理的思考
- 期待値の計算と条件の活用
- 整数条件による解の限定
名古屋大学数学の傾向と対策
| 分野 | 出題頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分・積分 | ★★★★★ | 面積・体積計算、最大最小問題が頻出 |
| ベクトル | ★★★★☆ | 空間ベクトル、内積の活用が多い |
| 数列・極限 | ★★★★☆ | 漸化式、級数の収束が重要 |
| 確率 | ★★★☆☆ | 期待値、条件付き確率に注意 |
| 整数 | ★★★☆☆ | 証明問題として出題されやすい |
| 図形と方程式 | ★★★☆☆ | 軌跡・領域の問題 |
類似問題で練習しよう(練習問題3問)
練習問題1:ベクトルと面積比
【問題】
三角形ABCにおいて、辺BCを2:1に内分する点をD、辺CAを3:1に内分する点をEとする。線分ADと線分BEの交点をPとするとき:
(1) AP⃗ を AB⃗, AC⃗ を用いて表せ。
(2) 三角形ABCの面積をSとするとき、三角形ABPの面積を求めよ。
【解答】
(1)
D は BC を 2:1 に内分するので:
AD⃗ = AB⃗ + BD⃗ = AB⃗ + (2/3)BC⃗ = AB⃗ + (2/3)(AC⃗ - AB⃗) = (1/3)AB⃗ + (2/3)AC⃗
E は CA を 3:1 に内分するので:
AE⃗ = (1/4)AC⃗
P は AD 上にあるので AP⃗ = sAD⃗ = s[(1/3)AB⃗ + (2/3)AC⃗] = (s/3)AB⃗ + (2s/3)AC⃗
P は BE 上にあるので AP⃗ = AB⃗ + tBE⃗ = AB⃗ + t(AE⃗ - AB⃗) = (1-t)AB⃗ + (t/4)AC⃗
係数比較:
- AB⃗ の係数:s/3 = 1 - t
- AC⃗ の係数:2s/3 = t/4
第2式より t = 8s/3。第1式に代入:s/3 = 1 - 8s/3 より s/3 + 8s/3 = 1、9s/3 = 1、s = 1/3
よって AP⃗ = (1/9)AB⃗ + (2/9)AC⃗
(2)
AP⃗ = (1/9)AB⃗ + (2/9)AC⃗ より、P は三角形ABC内で係数の和が 1/9 + 2/9 = 1/3 の点です。
三角形ABPの面積は、AC⃗ の係数 2/9 に対応するので:
△ABP = (2/9)S = 2S/9
練習問題2:整数値多項式
【問題】
f(x) = ax² + bx + c(a, b, c は実数)について、f(0) = 2, f(1) = 5, f(2) = 12 のとき:
(1) a, b, c の値を求めよ。
(2) すべての整数 n に対して f(n) が整数であることを示せ。
【解答】
(1)
条件より:
- f(0) = c = 2
- f(1) = a + b + c = 5 より a + b = 3
- f(2) = 4a + 2b + c = 12 より 4a + 2b = 10、2a + b = 5
(2a + b) - (a + b) = a = 2
よって b = 3 - 2 = 1
【答え】a = 2, b = 1, c = 2
f(x) = 2x² + x + 2
(2)
f(x) = 2x² + x + 2 = 2x(x-1) + 3x + 2 = 2·(x(x-1)/2)·2 + 3x + 2
より簡単に:f(x) = x(2x + 1) + 2
整数 n に対して n(2n+1) は整数なので、f(n) = n(2n+1) + 2 は整数である。 ∎
練習問題3:数列の極限
【問題】
次の極限を求めよ。
lim(n→∞) (1/n³)[1² + 2² + 3² + ··· + n²]
【解答】
公式 1² + 2² + ··· + n² = n(n+1)(2n+1)/6 を用いると:
lim(n→∞) (1/n³) · n(n+1)(2n+1)/6
= lim(n→∞) (n+1)(2n+1)/(6n²)
= lim(n→∞) (1 + 1/n)(2 + 1/n)/6
= 1 · 2 / 6 = 1/3
【別解:区分求積法】
(1/n³) Σₖ₌₁ⁿ k² = (1/n) Σₖ₌₁ⁿ (k/n)²
これは f(x) = x² の [0, 1] でのリーマン和なので:
→ ∫₀¹ x² dx = [x³/3]₀¹ = 1/3
まとめ:1997年度名古屋大学数学攻略のカギ
1997年度の名古屋大学理系数学を振り返ると、以下のポイントが重要でした:
- ベクトルの基本操作:位置ベクトル、内分点、重心の公式を確実に使えること
- 論理的な証明力:整数値多項式のような証明問題に対応できる力
- 極限計算の技術:はさみうちの原理、区分求積法の活用
- 場合分けと条件の活用:確率問題での論理的な絞り込み
名古屋大学の数学は、単なる計算力だけでなく、「なぜそうなるのか」を説明する力が問われます。普段から定理や公式の証明を理解し、自分で再現できるようにしておくことが合格への近道です。
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日本数学塾・数強塾 講師
藤原進之介
