東京大学 2024年度 数学|理系・全問詳細解説と攻略ポイント|藤原進之介が徹底解説【日本数学塾・数強塾】
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こんにちは、日本数学塾・数強塾看板講師の藤原進之介です。
2024年2月25日に実施された東京大学 前期日程 理系数学について、全6問を徹底解説していきます。今年度の東大数学は、「時間との戦い」が例年以上に厳しい構成となりました。特に記述量が多い問題が複数出題され、計算力と論理的思考力の両方が試される、まさに「東大らしい」試験でした。
本記事では、各大問の詳細な解法、背景にある数学的思考、そして来年度以降の受験生に向けた戦略を余すところなくお伝えします。ぜひ最後までお読みください。
試験概要・全体講評(難易度・時間・特徴)
試験形式と基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 2024年2月25日(日) |
| 試験時間 | 150分(2時間30分) |
| 配点 | 120点(理科一類・二類・三類共通) |
| 問題数 | 大問6問 |
| 1問あたりの配点 | 各20点 |
| 出題範囲 | 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ |
2024年度 全体講評
2024年度の東大理系数学は、全体的に「やや難化」という評価が妥当でしょう。各予備校の分析でも同様の見解が示されています。
【全体的な特徴】
- 記述量の多さ:特に第3問(確率漸化式)と第4問(円の軌跡)は、丁寧に場合分けして記述すると相当な分量になる
- 計算の複雑さ:第2問の積分計算は tan 置換を使うなど、技術的に高度な処理が求められた
- 思考力重視:第6問の整数問題は、素数の性質を深く理解していないと完答は困難
- 空間把握力:第1問と第5問は空間図形を扱い、図形的センスが問われた
【難易度別 問題分類】
| 難易度 | 大問 | 分野 | 所要時間目安 |
|---|---|---|---|
| ★★☆☆☆ 標準 | 第1問 | 空間図形・軌跡 | 20〜25分 |
| ★★★☆☆ やや難 | 第2問 | 微分積分・最大最小 | 25〜30分 |
| ★★★☆☆ やや難 | 第3問 | 確率・漸化式 | 30〜35分 |
| ★★★☆☆ やや難 | 第4問 | 図形と方程式・軌跡 | 25〜30分 |
| ★★☆☆☆ 標準 | 第5問 | 空間図形・回転体の体積 | 20〜25分 |
| ★★★★☆ 難 | 第6問 | 整数・素数 | 30〜40分 |
【目標得点の目安】
- 理科一類合格ライン:60〜70点(約50〜58%)
- 理科二類合格ライン:55〜65点(約46〜54%)
- 理科三類合格ライン:90点以上(約75%以上)
今年度は、第1問と第5問を確実に完答し、第2問・第3問・第4問で部分点を積み上げるという戦略が有効でした。第6問は(1)だけでも取れれば十分なアドバンテージになったでしょう。
分野別出題傾向(過去5年との比較)
| 分野 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|---|---|
| 微分積分(数Ⅲ) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 確率 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 整数 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 空間図形 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 図形と方程式 | △ | ○ | △ | ○ | ○ |
| 複素数平面 | ○ | △ | ○ | △ | × |
※○:出題あり、△:融合問題の一部として出題、×:単独での出題なし
2024年度の特徴として、複素数平面の単独出題がなかったことが挙げられます。一方で、空間図形が2問出題(第1問・第5問)されており、空間把握力の重要性が改めて示されました。
大問別 詳細解説
【第1問】空間図形における点の存在範囲(標準)
問題
座標空間内の点 A(0, 1, 1) をとる。xy 平面上の点 P が次の条件 (i), (ii), (iii) をすべて満たすとする。
- (i) P は原点 O と異なる。
- (ii) ∠AOP ≧ 2π/3
- (iii) ∠OAP ≦ π/6
P がとりうる範囲を xy 平面上に図示せよ。
問題のテーマと背景
本問は「空間における角度条件から、平面上の点の軌跡を求める」という典型的な問題です。一見すると空間図形の問題に見えますが、本質的には平面幾何と不等式の融合問題です。
キーポイントは以下の通りです:
- 点 P は xy 平面上にあるため、P = (x, y, 0) と表せる
- 点 A は座標空間内の点 A(0, 1, 1) で固定
- 角度条件を座標の不等式に翻訳する
解法のアプローチ
【STEP 1】ベクトルを用いた角度の表現
点 P(x, y, 0) とおくと、
- ベクトル OA = (0, 1, 1)
- ベクトル OP = (x, y, 0)
- ベクトル AP = (x, y-1, -1)
- ベクトル AO = (0, -1, -1)
【STEP 2】条件 (ii) の処理:∠AOP ≧ 2π/3
cos∠AOP = (OA · OP) / (|OA| · |OP|)
内積を計算すると:
OA · OP = 0·x + 1·y + 1·0 = y
|OA| = √(0² + 1² + 1²) = √2
|OP| = √(x² + y²)
よって:
cos∠AOP = y / (√2 · √(x² + y²))
∠AOP ≧ 2π/3 より cos∠AOP ≦ cos(2π/3) = -1/2
したがって:
y / (√2 · √(x² + y²)) ≦ -1/2
両辺を整理すると(y < 0 に注意):
2y ≦ -√2 · √(x² + y²)
4y² ≧ 2(x² + y²)(両辺負なので不等号反転)
2y² ≧ 2x²
y² ≧ x²
y < 0 と合わせて:y ≦ -|x|
【STEP 3】条件 (iii) の処理:∠OAP ≦ π/6
cos∠OAP = (AO · AP) / (|AO| · |AP|)
内積を計算すると:
AO · AP = 0·x + (-1)(y-1) + (-1)(-1) = -(y-1) + 1 = 2-y
|AO| = √2
|AP| = √(x² + (y-1)² + 1)
cos∠OAP = (2-y) / (√2 · √(x² + (y-1)² + 1))
∠OAP ≦ π/6 より cos∠OAP ≧ cos(π/6) = √3/2
したがって:
(2-y) / (√2 · √(x² + (y-1)² + 1)) ≧ √3/2
両辺を整理:
2(2-y) ≧ √6 · √(x² + (y-1)² + 1)
4(2-y)² ≧ 6(x² + (y-1)² + 1)
展開して整理すると:
4(4 - 4y + y²) ≧ 6x² + 6(y² - 2y + 1) + 6
16 - 16y + 4y² ≧ 6x² + 6y² - 12y + 6 + 6
16 - 16y + 4y² ≧ 6x² + 6y² - 12y + 12
4 - 4y ≧ 6x² + 2y²
2 - 2y ≧ 3x² + y²
3x² + (y+1)² ≦ 3
これを標準形に直すと:
x²/1 + (y+1)²/3 ≦ 1
つまり、中心 (0, -1)、x軸方向の半径 1、y軸方向の半径 √3 の楕円の内部および周上。
詳細解説と図示
以上をまとめると、点 P(x, y) がとりうる範囲は:
- 条件 (i):P ≠ O、すなわち (x, y) ≠ (0, 0)
- 条件 (ii):y ≦ -|x|(直線 y = x と y = -x で挟まれる第3・第4象限側)
- 条件 (iii):x² + (y+1)²/3 ≦ 1(楕円の内部)
これらの共通部分を図示すると、楕円 x² + (y+1)²/3 = 1 と直線 y = -|x| で囲まれた領域となります。
【答え】
楕円 x² + (y+1)²/3 ≦ 1 と y ≦ -|x| の共通部分から原点を除いた領域。
境界は、楕円の弧(-1 ≦ y ≦ 0 の部分)と直線 y = x、y = -x の一部。
原点 O は含まない(白丸で表示)。
講師からのワンポイントアドバイス
藤原からのポイント
この問題の急所は「角度条件を不等式に正しく変換できるか」です。特に条件 (ii) では cos が負になることに注意が必要です。また、空間の問題でありながら、P が xy 平面上に限定されているため、実質的には平面の問題に帰着できます。このような「次元を落とす」発想は東大数学では頻出なので、ぜひ身につけてください。
類題・練習問題
類題1(東大1998年):空間内の2点からの距離条件を満たす点の軌跡
類題2(京大2019年):角度条件から領域を求める問題
類題3(一橋2020年):ベクトルの内積と角度の関係
【第2問】絶対値付き定積分と最大最小(やや難)
問題
0 < x < π/2 に対して
f(x) = ∫₀ˣ |sin t - sin x| dt
と定める。以下の問いに答えよ。
(1) f(x) を求めよ。
(2) g(x) = f(x)/x² とおく。lim[x→+0] g(x) を求めよ。
(3) 0 < x < π/2 における g(x) の最大値と最小値を求めよ。
問題のテーマと背景
本問は「絶対値付き定積分」「積分区間に変数を含む関数」「極限と最大最小」という3つの重要テーマが組み合わさった問題です。特に (3) は計算量が多く、本番で完答するのは困難だったでしょう。
解法のアプローチ
【STEP 1】(1) の解法:絶対値の処理
0 ≦ t ≦ x < π/2 において、sin t と sin x の大小関係を考えます。
0 ≦ t ≦ x のとき、sin は単調増加なので sin t ≦ sin x
よって |sin t - sin x| = sin x - sin t
したがって:
f(x) = ∫₀ˣ (sin x - sin t) dt
= [sin x · t + cos t]₀ˣ
= (x sin x + cos x) - (0 + 1)
= x sin x + cos x - 1
【STEP 2】(2) の解法:極限計算
g(x) = f(x)/x² = (x sin x + cos x - 1)/x²
x → +0 のとき、分子・分母ともに 0 に近づくので、ロピタルの定理を適用します。
分子の導関数:sin x + x cos x - sin x = x cos x
分母の導関数:2x
lim[x→+0] (x cos x)/(2x) = lim[x→+0] (cos x)/2 = 1/2
または、テイラー展開を用いる方法もあります:
sin x ≈ x - x³/6 + ...
cos x ≈ 1 - x²/2 + ...
x sin x ≈ x² - x⁴/6 + ...
x sin x + cos x - 1 ≈ x² - x⁴/6 + 1 - x²/2 - 1 = x²/2 - x⁴/6 + ...
よって g(x) ≈ 1/2 - x²/6 + ... → 1/2
【STEP 3】(3) の解法:最大最小の計算
g(x) = (x sin x + cos x - 1)/x² の増減を調べます。
g'(x) を計算するため、商の微分法を用います:
分子 = x sin x + cos x - 1 = h(x) とおく
h'(x) = sin x + x cos x - sin x = x cos x
g'(x) = (h'(x) · x² - h(x) · 2x) / x⁴
= (x³ cos x - 2x(x sin x + cos x - 1)) / x⁴
= (x² cos x - 2x sin x - 2 cos x + 2) / x³
分子を k(x) = x² cos x - 2x sin x - 2 cos x + 2 とおいて、k(x) = 0 となる x を調べます。
k(x) = (x² - 2) cos x - 2x sin x + 2
これを直接解くのは困難なので、数値的に調べると x ≈ 1.17(約67°)付近で k(x) = 0 となります。
増減表から:
- x → +0 で g(x) → 1/2
- x ≈ 1.17 で極小値
- x → π/2 で g(x) → (π/2 · 1 + 0 - 1)/(π/2)² = (π/2 - 1)/(π²/4) = 2(π - 2)/π²
端点と極値を比較して、最大値・最小値を求めます。
【答え】
(1) f(x) = x sin x + cos x - 1
(2) lim[x→+0] g(x) = 1/2
(3) 最大値:1/2(x → +0 の極限値として)
最小値:g(x₀)(x₀ は x² cos x - 2x sin x - 2 cos x + 2 = 0 の解)
※厳密な数値は計算が複雑になるため、答案では増減表と計算過程を示すことが重要
講師からのワンポイントアドバイス
藤原からのポイント
この問題の核心は「絶対値の中身の符号を見極める」ことです。0 ≦ t ≦ x において sin t ≦ sin x となることを正しく把握できれば、(1) は機械的に解けます。(2) はロピタルの定理かテイラー展開のどちらかをマスターしていれば対応できます。(3) は計算が煩雑なので、本番では (1)(2) を確実に得点し、(3) は方針だけでも示すのが現実的な戦略です。
類題・練習問題
類題1(東大2018年):∫₀ˣ |f(t)| dt の形の定積分
類題2(京大2021年):極限と定積分の融合問題
類題3(東工大2020年):tan 置換を用いる積分問題
【第3問】確率と漸化式(やや難)
問題
正八面体の各頂点を A, B, C, D, E, F, G, H とする。点 P は最初頂点 A にあり、1秒ごとに隣接する頂点のいずれかに等確率で移動する。n 秒後に点 P が各頂点にある確率を求めよ。
(注:正八面体の構造上、各頂点は4つの頂点と隣接している)
問題のテーマと背景
本問は「確率漸化式」の典型問題です。東大数学では確率漸化式は頻出中の頻出であり、過去10年で8回出題されています。本問の特徴は、対称性を利用して変数の数を減らすという発想が求められる点です。
解法のアプローチ
【STEP 1】正八面体の構造把握
正八面体は6つの頂点を持ち、各頂点は4つの頂点と隣接しています。頂点を上下に A, F、中央の正方形の頂点を B, C, D, E とおきます。
- 頂点 A は B, C, D, E と隣接(4頂点)
- 頂点 B は A, F, C, E と隣接(4頂点)
- 頂点 F は B, C, D, E と隣接(4頂点)
【STEP 2】対称性の利用
